【AFP=時事】カスピエン・グルタ(Caspien Gruta)君(12)は、フィリピン男子の通過儀礼である割礼が
火山の噴火や新型コロナウイルスの流行により延期されたため、1年以上もからかいの対象になっていた。
「今、割礼を受けなかったら恥をかくんじゃないかと心配」とグルタ君は語った。

フィリピンは世界でも特に割礼率の高い国の一つ。割礼は数百年前から行われており、男の子が大人になるために重要だと広く受け止められている。
他国では割礼に対する疑念が広まりつつあり、「児童虐待」と批判されることもある。
一方、フィリピンでは問題視されることはほぼなく、男の子には割礼を受ける大きな圧力がかかっている。

政府や地域の支援を受け開設される診療所では毎年、多数の男子が無料で割礼手術を受けているが、
昨年の「割礼シーズン」はコロナ禍により、人々の記憶に残る限りで初めて中止された。

これにより、グルタ君を含め多くの男の子は割礼を延期せざるを得なくなり、家族内の男性や男友達から嘲笑される憂き目にあってきた。

首都マニラ南方にあるカビテ(Cavite)州は、5月以降に徐々に無料手術を再開した数少ない州の一つ。
同州シラン(Silang)にある屋根付きのバスケットコートに設置された仮設診療所に並んだグルタ君は、周りの子たちよりも年長だった。
20分の手術を終えると、「本物のフィリピン人になれた気がする。割礼を受けることはフィリピン人であることの一部だから」と語った。

別の屋外診療所で手術を受けたアルメル・アルシロ(Almer Alciro)君(12)は、
「僕が割礼を受けたのは、身長が伸びてスポーツがうまくなると言われたから」と話した。
アルシロ君の家族は、私立病院での手術費用を捻出できなかった。
私立病院での施術料は最高1万2000ペソ(約2万6000円)に上り、多くの人の月収を上回る。

無料手術の再開を待つ間、アルシロ君は友達に「未割礼」と呼ばれ、からかわれていた。
割礼が男らしさの象徴であるフィリピンでは、腰抜けと呼ばれることに近い悪口だ。手術後、アルシロ君は「やっと割礼を受けられてうれしい」と語った。

集団割礼は、学校が夏休みに入る4〜6月の猛暑期によく行われる。
通常は1日に数百人が野外で手術を受けるが、今年はコロナ関連の規制により人数は大幅に減少。多くの地域ではコロナ流行が続いており、無料手術は再開していない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8ec674d48b8abea4cdf716a6f583396d222e9433

フィリピン・カビテ州シランで行われた集団割礼の会場で、手術を受ける男の子
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