ワクチンの接種率が世界中で高まっている一方で、さまざまな理由からワクチンを接種しないことを選ぶ人たちもいる。
そんななか、米紙「USAトゥデー」によると「フロリダ州はここ7日間の平均感染者数が全米で2番目に多くなっている」という。

そのフロリダ州で、ある医師の決定が物議を醸しているのだ。

話題になっているのは、リンダ・マラチーニ医師。彼女は患者らに宛てた手紙で、今後はワクチンを接種していない患者への対面診療を受け付けないと伝えた。
ファイザー社のワクチンが正式に承認されたことを受けての決断だった。

米「NBCマイアミ」が入手した手紙によれば、マラチーニは「これは公衆衛生上の緊急事態だ。こうした状況では個人の権利よりも公衆衛生が優先される」と書いている。
さらに「私たちの間では、社会の健康と幸福を守るための無私無欲な配慮が欠けているようだ」と続けた。

この方針は9月15日から実施される予定だが、当該の日程までに新しい診療所を見つけられなかったワクチン未接種の患者、
あるいは医学的理由からワクチンを接種できない患者は、別の医者が見つかるまでは遠隔医療を使って診察するという。

「他の(ワクチンを接種している)患者やスタッフを、不必要なリスクにさらすようなことはもうできない」とマラチーニは訴えている。

マラチーニは米誌「ニューズウィーク」の取材に対し、この方針に対する反応は概ね良好だと答えていた。
だがネット上では、彼女のスタンスは「ヒポクラテスの誓いに違反している」と非難する声も上がっているという。

ヒポクラテスの誓いとは、古代から医療関係者が守るべきとされてきた倫理の誓いだ。いかなる場合も苦しむ患者を全力で治療することが医者には求められる。

マラチーニはこうした意見に対し、ヒポクラテスの誓いを破っていないと主張している。
たとえば免疫不全や化学療法を受けている患者には、コロナの重症化や死に至るリスクが高い。
彼らを守るためにも、ワクチンを接種していない人との接触を制限するというのが、彼女のスタンスだ。

「ヒポクラテスの誓いは科学的根拠に基づいています。私は科学に従っているのです。患者のために、この方針を取り決めました」

ワクチンが未接種の患者の治療を拒否した医師は、マラチーニが初めてではない。
「USAトゥデー」によれば、8月、アラバマ州のジェイソン・バレンティン医師が、10月1日以降はワクチンを接種していない人を診察しないことを発表している。

なお米紙「ニューヨーク・ポスト」によると、公民権法では、医師は患者の年齢、性別、人種、性的指向、宗教、国籍に基づいて治療を拒否することは許されない。
だがワクチン接種の有無を理由に治療を拒否できるかは不明だという。
https://courrier.jp/news/archives/260085/