自民党総裁選のたびに有力候補と目されてきた石破茂元幹事長(64)が、今回は態度を決められずにいる。敗北すれば再起不能に陥りかねないとの見方もある中、石破派内では慎重論が強まり、他派閥の支援も当てにできず、外堀は埋まりつつある。どう振る舞えば「総裁候補」として生き残れるのか。状況を見極めて活路を探るが、手詰まり感も漂う。

 「国民と党員の声を聴いて、国家と国民のために何をすべきか。それが大事だ」。石破氏は7日の同派会合で、熟慮する姿勢を崩さなかった。
 会合には、河野太郎規制改革担当相(58)の支援に回った平将明氏と、休会中の山本有二元農林水産相を除く15人全員が参加。出席者からは「世論調査で人気が高いから出るべきだ」との声も上がったものの、「河野氏を支援すべきだ」という意見や慎重な検討を促す声が大勢を占め、鴨下一郎代表世話人が「まだ候補の顔触れも分からないから」と結論を先送りした。
 石破氏は昨年9月の総裁選まで計4回立候補した。野党時代の2012年は党員票でトップだったが、国会議員による決選投票で安倍晋三氏に敗れ、18年も5割近い党員票を得たものの、結果は変わらなかった。周辺の反対を押し切って出馬した昨年は3人中最下位に沈んだ。派内の強い反発を受けて派会長の辞任を余儀なくされ、側近だった山本氏ら3人が休会・退会。石破派は空中分解寸前に陥った。
 石破氏は今回も出馬を完全には諦めていない。報道陣から対応を問われると「白紙」と繰り返し、4日には二階派会長の二階俊博幹事長に支援を要請した。だが、頼みの党員票は河野氏と奪い合う構図となり、国会議員の支持という積年の弱点も解消されていない。必要な推薦人20人も自前では確保できず、勝算は立たない。石破氏を支えてきた派外のベテラン勢も自重を促すほどだ。
 こうした状況から、石破派中堅は「石破茂の価値最大化」を主眼に対応すべきだと訴える。今回は総裁候補として命脈をつなぐことを重視し、次回以降の機会をうかがうべきだとの趣旨だ。ただ、具体策は見いだせていない。
 「勝ち馬」に乗って要職への返り咲きを狙うにしても、河野氏とは疎遠。河野氏が所属する麻生派の麻生太郎副総理兼財務相とは犬猿の仲だ。高市早苗前総務相(60)を支援する安倍氏とも反目してきた。岸田文雄前政調会長(64)が当選すると見定めても、その場合は麻生、安倍両氏が岸田氏に肩入れしている可能性が高く、石破氏が入り込む余地はなさそうだ。
 ある参院幹部は、石破派が近く分裂すると予測し、今回が「ラストチャンス」と指摘する。7日の会合後、石破氏は「行蔵(こうぞう)は我に存す」と周辺に漏らした。「進退は自分で決める」という意味だが、悩みは尽きそうにない。

時事通信 2021年09月08日07時15分
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