「菅は裏で岸田を『発信力がないので選挙で勝てない』『何がやりたいのか全くわからない』とこき下ろしてきた」(文藝春秋2020年5月号の赤坂太郎コラム)。

 官房長官時代の菅義偉による、岸田文雄の人物評だ。「当たらない」を繰り返して説明責任を果たさず、
安倍一強の権勢を笠に着るうちに指導者になれると勘違いして総理大臣になってしまった菅が、よく人のことを言ったものである。

 そんな岸田であるが、前回(昨年9月)に続いて、今月に予定される自民党総裁選への出馬を表明。
するとどういうわけか、党役員の任期制を打ち出し、それが「二階おろし」につながっていくなど、これまでのボンクラなイメージとは様相を異にしている。

 はたして岸田文雄とは、どんな人となりの政治家なのか。

(中略)

■「私の弱点が『発信力』にあることも自覚しています」
 前回の総裁選前に文藝春秋に掲載されたインタビュー記事は「リーダーには『聞く力』が必要だ」と題され、自ら発信しない様への言い訳のようなタイトルであった。
またアベノマスクについて「私もこの布マスクを普段から着用していますが、市販の不織布マスクと比べても機能的に劣っているとは思いません」と断言し、
安倍にへつらう素振りを見せていた(文藝春秋2020年7月号)。

 それが総裁選の最中に発売された同誌のインタビューでは「私の弱点が『発信力』にあることも自覚しています」(文藝春秋2020年10月号)と自ら述べ、
また「アベノミクスの格差を正す」と題して、安倍政権の成長戦略は不十分であり、中間層への手当を行うなど格差解消の必要を説いている。

 さらに候補者討論会のなかで岸田は、「総裁選に挑戦する中で、個人として自由に発言できることに気づいた」
「これからは立場ではなく、政治家として、自分自身としてどう発信するかをしっかり考えていきたい」と述べるにいたる(注2)。

 もっと早く気づけばいいのにと思うところだが、岸田にとっての前回の総裁選は、“自分探し”あるいは“自己啓発“の機会であったかのようだ。

■「東大に三回落ちた。私は決して線の細いエリートではない」
 発信に目覚めた岸田は何を語ったのか。前掲10月号のインタビューでは、上記のように安倍政治の罪の部分を論じると同時に、
誰しもが思う岸田の弱点を自ら潰していく。たとえば「権謀術数が渦巻く中」も歩み、
「加藤の乱」も経験して権力闘争とは無縁でないと、20年前の話でもって永田町的なマッチョぶりをアピールしている。

 また東京生まれの世襲議員であることから、ひ弱なボンボンと思われていることを意識してのことだろう、岸田は苦労や挫折の経験として、大学受験の失敗を語る。

「私は決して線の細いエリートではありません。母校の開成高校は東大に進む生徒が多い中、私は東大受験に三回失敗するなど悔しい思いもしました。
結局、早稲田と慶應の両方に受かりましたが」と言い、早大に進んで、バンカラな気風の中で自分を見つめ直すことができたと続けている。

(以下略、全文はソースにて)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a834f416bd953458a80ba194db546e03a0caf571?page=1