イスラエルは、40歳以上を対象に新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を行う、ブースター(追加免疫)接種プログラムを進めている。
そして、そのプログラムは成功の兆しを見せつつある。しかし最近になって感染者が急増し、予防接種プログラムの今後や、
現在進行中のパンデミックに関する議論が巻き起こっている。

今春までは事実上、イスラエルの人々の生活は通常に戻り、感染者数は少ない状態が続いていた。
そのため、ワクチン接種によって新型ウイルス感染症COVID-19がほぼ抑え込まれたかのように見えた。

ところが、7月以降に感染者が再び増え始めた。

イスラエルは昨年の冬、国民に免疫をつけようと急ピッチで接種を進めた。
国民への接種を行っている世界のほかの国々は、今後数週間から数カ月の間に一体なにが待ち構えているのか、イスラエルの状況に注目している。

9月1日に学校が再開された後も、ユダヤ歴の新年祭「ロシュ・ハシャナ」など大勢が集まる機会があるため、
イスラエル保健当局の指導者たちは感染状況に注意を払うこととなる。


ワクチン未接種者

ワクチン接種を迅速に行い、比較的高い接種率を誇っていたイスラエルだが、
総人口約900万人のうち、接種資格があるのに受けていない人が今も約100万人いる。

また、人口の約3分の1が14歳以下と、比較的若者が多い国でもある。
12歳以下の子供たちは健康状態に特定の問題がなければワクチンは接種できない。

接種率は高いものの、総人口の約60%しか2回のワクチンを完了していないことになる。

ただ、こうした人たちが接種できていなくても、春頃には感染者を抑え込むのに十分な接種レベルを獲得できていたようだ。

従来株より感染力が高いデルタ株は、ワクチンによる感染防御効果の一部を回避できるようだ。
それでも重症化の防止に関しては依然として高い効果がある。

しかし、データ分析を行う科学者たちは、当初イスラエルで唯一使用されていた米ファイザー製ワクチンで
獲得した免疫力が低下したことが、最近の感染増加の主な要因だと考えている。

イスラエル政府に新型ウイルスに関する助言をしているエラン・シーガル教授は、ワクチン接種から5〜6カ月が経過すると、
その予防効果は接種後の90%超から、おそらく30〜40%程度にまで低下するとしている。

「これが感染拡大の波を引き起こした」と、シーガル教授は述べた。異なる月にワクチンを接種した人たちの感染率を慎重に分析し、この結論を導き出したという。

ワクチンの効果は弱まるものの、依然としてかなりの人を重症化から守っている。
未接種者が重症化する確率は、接種した人と比べて60歳以上では約9倍、若年層では約2倍高い。

イスラエルはワクチンの防御効果の低下に対処するため、ブースター接種プログラムを展開。初めに60歳以上を、最近では40歳以上を対象に行っている。

高齢者への3回目の接種は1カ月前に始まったばかり。現在、高齢者の入院者数は横ばいになっており、接種の効果が現れているとみられる。
「これ(3回目の接種)でデルタ株の拡大が止まりつつある」と、シーガル教授は述べた。

初期のデータでは、3回目の接種後は、2回目の接種後に比べて感染や重症化を防ぐ効果が10倍になることが示されている。

ブースター接種プログラムに関する研究を率いるアナト・エッカ・ゾーハル博士は、3回接種すれば「感染と重症化の両方に対して高い防御効果」を得られると説明した。
「3回の接種は、現在の感染流行を抑制する解決策といえる」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58510853