「父をいとおしむ気持ちを込めながら、あの戦争の時代の『真実』を描くドキュメンタリーは可能だろうか」。映画監督の伊勢真一さん(72)の父・長之助(1912〜73年)は戦時中、ジャワ島(インドネシア)で大東亜共栄圏を掲げる日本のプロパガンダ映画をつくっていた。どんな思いで制作していたのかを知るために、父の足跡とオランダに残る“幻のフィルム”を追い求め、約30年をかけてドキュメンタリー映画「いまはむかし」が完成し、東京・新宿で上映が始まった。

(英字新聞部 森太)

 ジャカルタの国立映画制作所敷地内にあるツタに覆われた廃虚。伊勢さんの父が戦時中、映画をつくっていた日本映画社のスタジオだ。1942年にインドネシアに出征し、「文化戦線」の一員として45年の終戦まで3年半、ここで国策映画をつくり続けた。制作本数は約130本に及ぶ。15〜20分程度の短編が多い。父はその多くに中心スタッフとして携わった。

 「いまはむかし」では、子どもたちが日本語を勉強する「東亜のよい子供」、日本語の発表会「日本語 競技会」、日本と同じ隣組をつくり、イスラム教を信仰する住民らが皇居の方角に向かって最敬礼する「隣組」など現地の人々を日本人化することを目的とした映画の場面が紹介されていく。

 それらのフィルムは今、インドネシアの旧宗主国オランダの視聴覚研究所に保管されている。伊勢さんは三十数年前、名古屋大学のインドネシア研究者がオランダからコピーして持ち帰った映像で父の作品を初めて見た。戦後も多くの記録映画を残した父が戦時中につくっていた知られざる作品だった。そこから、父の足跡をたどる映画をつくろうと、インドネシアとオランダで取材を重ねてきた。

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2021年9月10日 15時47分