9/11(土) 20:12配信 読売新聞(ヨミドクター)
https://news.yahoo.co.jp/articles/2524b27895b1708837b6af5170f3648c9987796f


国立がん研究センターなど「多目的コホート研究」グループ
 ピーナツの摂取量が多い人は少ない人に比べて、脳梗塞(こうそく)の発症リスクが低いとの研究結果を、国立がん研究センターなどでつくる「多目的コホート研究(JPHC研究)」の研究グループが発表した。

 ピーナツには、不飽和脂肪酸やミネラル、ビタミン、食物繊維などが多く含まれている。欧米の先行研究では、摂取が循環器疾患の予防に有効であるとされているが、アジアからの研究報告は初めてとしている。

 米医学誌「Stroke」(オンライン)に9月9日掲載された。

7万5000人を追跡調査
 1995年と98年に、岩手や秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に住む45〜74歳の人で、食事アンケートに回答し、循環器疾患やがんになっていなかった約7万5000人を2012年まで追跡調査した。

 摂取量が少ない順に四つのグループに分け、最も少ないグループを基準として比較した。脳梗塞や脳出血などの脳卒中と、心臓の筋肉に栄養を運ぶ冠動脈が詰まることで起きる心筋梗塞などの虚血性心疾患の発症リスクを調べた。年齢、性別などによる影響を統計学的に調整した。

脳卒中全体で16%減、脳梗塞は20%減
 追跡期間中に3599人が脳卒中(うち脳梗塞2223人)を、849人が虚血性心疾患を発症した。その結果、ピーナツの摂取量が最も少ないグループ(1日当たりの摂取量の中央値0グラム)に比べて、最も多いグループ(同4・3グラム)は、脳卒中全体で16%、脳梗塞に限ると20%、発症のリスクが低かった。

 脳卒中のうちの脳出血と、心筋梗塞などの虚血性心疾患では、摂取量との関連はみられなかった。

 脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患全体では、脳卒中のリスク低下によって、13%リスクが低下した。

虚血性心疾患との関連はみられず
 今回の結果について、研究グループの池原賢代・大阪大学特任准教授(公衆衛生学)は、「ピーナツに多く含まれる不飽和脂肪酸にはLDLコレステロールを下げる作用があるほか、食物繊維には血液凝固因子や炎症反応の減少、血糖値の急な上昇の抑制、ビタミンEには抗酸化作用が報告されており、脳梗塞の発症リスク低下との関連がみられたと考えられる」と解説する。

 一方、欧米の先行研究では、虚血性心疾患の発症リスクの低下が報告されているが、今回の研究では関連がみられなかった。欧米と比べて、ピーナツの摂取量そのものが少ないことや、虚血性心疾患の発症が少ないことが理由ではないかとしている。

取り過ぎには注意を
 池原特任准教授は、「摂取量が最も多かったグループでも1日当たりでは4グラム程度と、欧米に比べればかなり少ないが、それでも脳卒中のリスク低下と関連がみられたことが注目される」と話す。

 そのうえで、「ピーナツは食後血糖値が上がりにくい食品である一方で、カロリーが高いために取り過ぎても良くない。それぞれの食生活の中で無理なく取り入れるのがよいのではないか」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)