今年4―5月、インドで新型コロナウイルス感染症(COVID−19)による患者・死者が急増する中で、
首都ニューデリーの複数の病院では吸入用酸素が払底し、市内の多くの患者が呼吸困難に苦しんだ。

有力病院であるサー・ガンガ・ラム記念病院も例外ではない。

3日、同病院をロイターが取材に訪れたとき、COVID−19患者の最後の1人が回復して退院するところだった。
医療専門家によれば、この劇的な状況改善は、自然感染とワクチン接種によって免疫水準が向上したことが原因であるという。


一部の専門家から、ワクチン未接種の子どもたちが新たな変異株に対して脆弱になりかねないとの警告が上がる中、
ほぼすべての州が新型コロナ専用の小児科病棟を準備しつつある。

マディヤ・プラデシュ州などではレムデシビルなどの抗ウイルス薬の備蓄も増やしている。

もっとも、政府の調査ではインド国民の実に3分の2はすでに自然感染を通じてCOVID−19に対する抗体を獲得していると推定され、
成人の57%は少なくとも1回のワクチン接種を受けている。

そのため多くの医療専門家は、新たな感染拡大が生じるとしても、その被害は第2波に比べて大幅に軽減されるだろうと考えている。

「多くの人がすでに感染したか、ワクチン接種を受けているので、感染する可能性の高い人は減っているだろう」と語るのは、
インド公衆衛生財団会長を務める疫学者・心臓専門医のK・スリナス・レディ氏。

「再感染やブレークスルー感染が生じるとしても、症状は軽く、自宅療養で対応できる可能性が高い。
第2波のときに顕著になった医療サービス提供における深刻なギャップが再現される可能性は低い」

ケララ州ではすでにそうした兆候が見られる。インド南部に位置する同州は、現在国内で最も多くの感染者を出しており、
その中には、ワクチン接種が完了した、あるいは少なくとも1回は接種を受けた住民も多い。だが、同州の死亡率は国内平均よりもかなり低くなっている。

インドのCOVID−19感染者数は3310万人で、米国に次いで世界で2番目に多く、死者は44万1042人となっている。

ワクチン接種回数は6億9840万回で、成人人口9億4400万人のうち、57%が少なくとも1回の接種を受け、17%が2回の接種を完了している。

インド保健省は、今年中には国内の成人人口全体で免疫を獲得したいとしている。
想定される第3波への対応に関して同省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

疫学者で公衆衛生の専門家であるチャンドラカント・ラハリヤ氏は、データとトレンドに勇気づけられていると語った。

「過去に感染歴があれば、ワクチン接種が1回だけでも、感染歴のない人や2回の接種を受けた人に比べて
はるかに抗体価が高くなる場合があるというエビデンスが得られつつある。これはインドにとっては心強い」
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-india-preparations-idJPKBN2G40IQ