新型コロナウイルスの感染者数が減り始めた。感染力の強いデルタ株の影響もあり、新規感染者数は一時、全国で1日2万5千人を超えていたが、半分程度になった。ここに来て減少に転じたのはなぜなのか。

 「増加要因がある一方で、低下させる要因もある。そのバランスのなかで低下のほうが強くなると(感染者数が)下がっていく」。8日あった厚生労働省の専門家組織の会合後、座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は会見でこう話した。

デルタ株に人出など 感染拡大に影響
 感染が爆発的に広がった大きな要因は、従来株の約2倍の感染力があるとされるデルタ株だ。国内では6〜7月にかけて全国で急速に置きかわりが進んだ。

 同じ時期に沖縄県を除く全国で緊急事態宣言が解除されて人出が増えた。7〜8月には東京都などに再び宣言が出たが、7月下旬の4連休や夏休みがあり、人出が思うように減らずに感染が広がる要素が多かった。

 感染拡大を減少させるには、人の流れを5割減らす必要があると、専門家組織は試算をもとに指摘していたが、減少幅はそれに至らなかった。東京都医学総合研究所によると、東京都内の繁華街での夜間(午後6時〜午前0時)の人出の最低値は、宣言前と比べて35・8%減だった。

 脇田氏の指摘は、こうした増加要因より、減少要因のほうの効果が上回ったということだ。

強くなり始めた減少要因とは
 一つはワクチンの接種だ。東京都内では65歳以上の高齢者の2回目接種率は7月上旬には40%程度だったが、いまは85%を超える。これまでは若者や中年の間でまず感染が広がり、重症化しやすい高齢者が感染していくというパターンが続いたが、高齢者の感染は激減。1週間平均の感染者のうち、60歳以上の割合は第3波の3月1日時点で30%だったのに対して、9月7日時点は8%。脇田氏は「若者で感染が増え、若者で終わるようになった」といい、これが感染拡大が長びかない一因だとした。

 天候の影響も指摘している…(以下有料版で,残り537文字)

朝日新聞 2021年9月12日 21時00分
https://www.asahi.com/articles/ASP9B62D1P9BULBJ00D.html?iref=comtop_7_05