亀裂を回避した麻生派、一本化を見送り…河野・岸田両氏を支持

 自民党総裁選で、麻生派が支持の一本化を見送ったのは、派内の決定的な亀裂を避けるためだ。
同派の河野太郎行政・規制改革相と距離があるベテランの間では、岸田文雄・前政調会長を推す声も多い。
同派会長の麻生副総理兼財務相は、河野氏が派閥を割る最悪の事態に至らぬよう、落としどころを探ってきた。

 「私は楽天的だから、『頑張れ』と言って送り出された以上、1票入れていただけるものだと思っている」。
河野氏は13日のTBSの番組で、麻生氏の総裁選対応を問われ、こう切り返した。「楽天的」と付けたのは、同派には複雑な事情があるためだ。

 麻生氏は元々、「閣僚として菅首相を支えている以上、今回は出馬すべきではない」との立場で、河野氏も理解を示していた。
ところが、首相の不出馬表明で事態は急変。河野氏が3日に出馬意向を伝えると、麻生氏は慎重姿勢をにじませつつ、容認した。
「麻生会長が止めたのに、振り切って出馬する展開は避けるべきだ」という周辺の助言も踏まえた対応だった。

 麻生派は、甘利明・党税制調査会長ら、「脱原発」などを掲げた河野氏に警戒感を抱くベテラン・中堅を抱える。
中堅・若手が河野氏の支持で動き出す中、河野氏の出馬準備に携わっていた派閥幹部に対し、麻生氏が「派をまとめる立場であることを考えろ」とたしなめる場面もあった。

 麻生氏は、河野氏に派内の根回しに努めるよう促した。河野氏は助言を受け、出馬に慎重なベテランに選対入りを依頼した。
派内の環境整備が整ったと判断した麻生氏は9日、河野氏に「やるからには勝て」と伝えた。面会後には、記者団に「激励した」と明かした。

 河野氏を支持する動きは、麻生派の外でも広がり始めていた。麻生派が河野氏の出馬に否定的となれば、派が割れる事態も起きかねなかった。
麻生氏は「(河野氏が)麻生派を飛び出る形になれば、仲間の後ろ盾を失ってしまう」と周辺に漏らしていた。「激励」には河野氏をつなぎとめる狙いがあった。

 もともと宏池会(現・岸田派)にルーツを持つ麻生派には、岸田氏に近い議員も多い。
麻生氏は10日、河野氏と距離があるとされる甘利氏や森英介・元法相、鈴木俊一・前総務会長らと協議した。
出席者によると、「いかに派閥として軟着陸させるか」が主要議題となった。苦渋の判断が、河野氏か岸田氏を「基本的に支持」との方向性だった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/425eb7ab8144b49b3bd416c1860d051d1ef0d0d0