https://news.yahoo.co.jp/articles/a7336c1e55919ca0ef2171628b283aa15092231e
 野外に生息するコウノトリが増加している。繁殖シーズン後の生息数(9月1日時点)は、前年同期より36羽多い計263羽に達した。
国のレッドリストの選定指標の一つとされる「成熟個体」も増えており、兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(豊岡市)は「レッドリストのランクが下がる可能性も出てきた」としている。

今シーズンの営巣地は島根県から栃木県までの34か所(7府県)に広がり、兵庫県内では、但馬地域以外では初めて淡路市で繁殖に成功した。
同公園が救護後に放鳥した5羽を含めると、計61羽のヒナが8月中旬までに飛び立った。

コウノトリは、レッドリストで「絶滅危惧1A類」(ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に選定されている。
繁殖が可能となる3歳以上の成熟個体数がランクを決める一つの指標として用いられているが、同公園が独自に集計したところ、1A類の基準(50羽未満)を超える72羽だったという。

成熟個体数は、2019年に初めて50羽に達し、3年連続で基準を上回る状態になった。
1ランク下の「絶滅危惧1B類」への引き下げも見えてきたが、同公園は「絶滅の可能性が低くなったという確実なデータをさらに示す必要がある。今すぐという段階ではない」との見方を示す。
野外に生息するコウノトリの総数は来年にも300羽に到達する見込みだ。

一方で、かつての国内のコウノトリは、遺伝的な多様性が失われたことが一因となって絶滅したと考えられている。
血縁的に近いペアについて、雄雌のいずれかを一時的に捕獲するといったペア形成や繁殖の管理を継続し、遺伝的多様性を確保していく。

江崎保男園長は「レッドリストのランクダウンは望ましいが『数が増えればいい』というものではない。遺伝的多様性を担保していなければ持続可能性が保証されない」などと指摘。
海外との個体交換を含め、さらに検討を進める考えを示している。