アーバンライフメトロ9月29日
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■全国では半数近くで定員割れ
読売新聞オンラインが9月28日(火)、私立大学のほぼ半数で定員割れが起きていると報じました。これは日本私立学校振興・共済事業団(千代田区富士見)が発表した「令和3年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」に基づくものです。

同団体は、1999(平成11)年から継続して私立大学・短期大学の入学者のデータを調査しており、本年度は23回目となります。全国的な傾向だけでなく、地域別、学部系統の動向や大学の規模ごとに調べてられているため、少子化やコロナ禍の影響を受けた大学や学部の傾向が鮮明に浮かびます。

本年度の調査対象となった全国の私立大学597校のうち、入学定員充足率(入学者数÷入学定員)が100%未満の学校数は、全体の46.4%にあたる277校でした。2020年度は調査対象593校のうち184校(全体の31%)だったことを考えると、1年で急激に定員割れが進んだといえます。

■都内私立大学の入学定員充足率は100.8%
さて、私立大学が集中する東京都の数値をみると、調査対象となった都内私立大学は117校です。入学定員充足率は100.8%と100%を超えています。

一見すると都内私立大学は定員割れと無関係のように思えますが、全体の33.4%にあたる39校で定員割れをしていることが明らかになっています。平均では100%を超している都内私立大学――しかしこれには深い理由があるのです。

大都市圏への若者流出を防ぐため、国は私立大学の定員厳格化を行っています。大規模大学の合格者数は募集人員の1.1倍、中規模以下の大学では1.2倍と定められ、各大学はこれを順守しています。

東京都のデータを詳しくみると、入学定員充足率120%以上は5校となっています。順に、110%以上から120%未満は20校、100%以上から110%未満の大学は53校です。このように一部の大学に人気が集まったことで、平均値は押し上げられているのです。

■早慶はさらに別格ポジションへ?
大学の定員割れは「受験者数が少ない」という前提条件がありますが、その一方、近年の大学進学率が上昇し、2019年度は53.7%と過去最高になりました。

今回の結果は、大学の数が増えたことで、大学入学のハードルが格段に下がったことが理由のひとつです。その背後にある「大学全入時代」という言葉をご存じの人も多いでしょう。しかし、全国的な知名度を誇る都内私立大学は定員割れが問題視される時代でも「無風状態」です。ここ数年、受験シーズンになるとこれらの大学群は

・安全志向
・地方受験生の地元志向

の流れで、志願者減少が大きくメディアに取り上げられます。ただ依然として受験者数は多く、定員割れとは無縁の存在です。一般入試で合格をつかみ取ることは簡単ではありません。

ちなみに、文部科学省が発表している「令和2年度全国一覧」によると、早稲田大学(新宿区戸塚町)の募集人員は8940人。2020年度の4月入学者と9月入学者の合計は8970人で、国の方針である「定員厳格化」を守っていることが分かります。また受験倍率が高いといっても、以前より多めに合格者を出しているわけではありません。都内私立大学の雄である早稲田大学と慶応義塾大学(港区三田)で定員割れが起きれば、それこそ激震が走るというものですが、現状ではありえない「夢物語」なのです。

■私立大学は二極化が進むか
早稲田大学と慶応義塾大学以外でも、

・上智大学(千代田区紀尾井町)
・東京理科大学(新宿区神楽坂)
・明治大学(千代田区神田駿河台)
・青山学院大学(渋谷区渋谷)
・立教大学(豊島区西池袋)
・中央大学(八王子市東中野)
・法政大学(千代田区富士見)

といった大学は、少子化で人気が急落するとは考えにくい状況です。ただし、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の中には、この1〜2年の入学者の充足率が微妙に100%を下回っている大学はあります。

こうした有名大学では実質倍率が高くても、合格者が他大学へ進学する可能性は少なくありません。私立定員厳格化の影響で合格者を多く出せず、かつ追加合格を出してもすでに他大学への進学を決めている受験生の存在が影響していると推測されます。そのため、入学定員充足率が100%を切っていても、世間一般のイメージする定員割れとは程遠く、人気がなくなったとは言い切れないのです。

今や誰もが望めば大学に入れる時代になりましたが、残念ながらそこには大学ランクという現実が横たわっています。少子化やコロナ禍を起点に、私立大学の二極化がさらに進むことは避けられません(以下略)。