2】河野批判と常にセットで行われた高市支持の盲点

 高市氏を支持するネット保守は、高市氏のタカ派的政策を安倍政権の正統なる後継と見做し絶賛した。これは問題ないにしても、その支持の特徴としては、常に「河野氏への批判・攻撃」とセットで行われていた点である。

 当時、総裁選公示前の段階では大メディアが各種の世論調査から”河野優勢”の報道がなされた。一方、ネット上のアンケートでは「次期総裁にふさわしい候補」として高市氏への支持が圧倒的に出力され、「大メディアの世論調査と、ネット世論のギャップ」に疑問の声が噴出した。

 当然の事この理屈は、2002年から台頭してきたネット保守がインターネット空間を寡占した結果、ネット空間は少数のアクティブユーザーによる「タカ派、右派」的価値観に偏重していたから不思議な事ではない。結果として前者の「大メディアの世論調査」こそが概ね正しかったことが証明されたものの、ネット保守は”河野優勢”を懐疑し、それが即”河野批判”につながって一大運動となった。

 なぜネット保守は、高市氏の支援とセットで河野批判を展開したのか。第一に、ネット保守から蛇蝎の如く嫌われていた石破茂氏が河野氏支持に回ったのが大きい(詳細は、拙稿”石破茂氏はなぜ「保守」に嫌われるのか?〜自民党きっての国防通が保守界隈から批判される理由〜”20.9.12,参照のこと)。石破氏が所謂”小石河連合”を組んだと報道されたことで、河野氏までもその批判に巻き込まれた格好となった。

3】元々ネット保守は河野氏に対して好意的だった

 しかしネット保守における河野氏への嫌悪感は、実は元来ほとんど存在していなかった。むしろ賞賛されていた位である。河野氏は第二次安倍政権下で外務大臣(平29年8月〜令元9月)の要職を務めた。その中、2019年7月19日に、韓国人元徴用工訴訟を巡る問題で、”南官杓(ナムグァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼び出し、韓国の対応は「極めて無礼だ」と異例の厳しい表現で抗議”(19.7.20,読売新聞)した。

これを受けて嫌韓姿勢が色濃いネット保守は歓喜し、「河野太郎は、(河野談話を出した)父・河野洋平とはまったく違う」「見直した」などの反応が踊った。19年のこの時点では、ネット保守はむしろ河野支持であった。

 ところがすでに述べた通り、今次総裁選で高市氏が出馬表明し、対抗馬と見做す河野氏の優勢が報じられると、その背後に石破氏が協力していることから、一挙にネット保守は河野氏の批判に転換する。まるでオセロの白が黒に次々とひっくり返るように、ネット保守による高市支持は河野批判と完全にセットで展開されるようになる。

 それまで「父・河野洋平とは違う」と賞賛される向きだった河野氏は、「反日政治家」とレッテルを貼られた。とりわけ河野一郎・河野洋平・河野太郎の所謂「河野三代」を「河野反日(売国)三代」と言い換える言説が飛び回った。

「河野太郎は河野洋平とは違う」という評価を獲得した前述「極めて無礼」発言は無かったことにされ、河野三代を同一人格として見做し、批判する大キャンペーンが開始されたのである。

https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20210930-00260743