■感染の幅広がる

「これまでは岡山市と倉敷市に制限をかければ収束の確信を持てたが、それだけではおぼつかなくなっている」。
伊原木知事は9月10日、県の対策本部会議で、対策の難しさをこう語った。

第5波では感染力の強いインド由来の「デルタ株」が猛威を振るった。
1日あたりの新規感染者数は、第4波の最多の189人(5月8日)を大きく上回る307人(8月18日)を計上した。

過去には比較的抑えられていた県北部にも感染は拡大し、津山市は8、9月のわずか2か月で254人が感染。
これは、昨年からの累計感染者数の55%にあたる。

これまで感染があまりなかった若年層にも、感染が広がった。

4〜6月の10歳未満と10歳代の感染者の割合は全体の12%(4897人中612人)だったが、
7〜9月には22%(7391人中1684人)を占めた。デルタ株によって、家庭内や学校の部活動で感染が広がったことが原因とみられる。


■ワクチン効果

新規感染者の急増に対し、医療提供体制は比較的持ちこたえた。最も深刻だった9月1日に病床使用率48・1%、
重症病床使用率も30・9%となったが、いずれも第4波の最悪期に比較すると半分程度にとどまった。

要因として挙げられるのが、高齢者のワクチン接種の広がりだ。県は高齢者は軽症でも入院としており、第4波では多くの病床が埋まった。
だが、第5波が訪れるまでに大半の高齢者が2回の接種を完了しており、入院を大幅に抑えることができた。

また、県が7月4日から9月27日までの感染者7473人の接種状況を調べたところ、
ワクチン未接種の人が80%(5944人)だったのに対し、2回接種して十分な免疫が働くとされる2週間以上経過した人は、わずか6%(460人)。

現在、県内で2回以上のワクチン接種を終えた人は52・8%(9月28日現在)に上っており、11月中には希望する人全ての接種を終える見込みだ。

県の担当者は「ワクチンなしでデルタ株に対処していれば、極めて悲惨な状態になっていただろう」と語る。
https://www.yomiuri.co.jp/local/okayama/news/20210930-OYTNT50244/