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2021.9.30 4:30

■新リーダーを覆う、永田町と早稲田の「ジンクス」とは
テレビや新聞では「昔から真面目でひたむきだった」「熱烈な広島カープファン」なんて感じで、岸田文雄新総裁の素顔を報じるなど、お祭り騒ぎをスタートさせているが、永田町では早くも「首相のジンクス」を心配する声が聞こえている。

まず、よく言われているのが、「長期期政権後は短命」というものだ。これは昨年、菅義偉首相が総裁選を制した時にも真っ先に言われていたが、実は今回にも当てはまってしまう。長期政権後は短命政権が最低2度は繰り返す、というのがこれまでの傾向だからだ。

首相の通算在職日数1980日の小泉純一郎氏の後は、安倍晋三氏(366日)、福田康夫氏(365日)、麻生太郎氏(358日)と年中行事のように首相が変わっている。また、通算在職日数の1806日の中曽根内閣後にも似た傾向が見られる。中曽根氏の後を引き継いだ竹下登氏(576日)は1年半ちょっと、そのあとの宇野宗佑氏も69日と超短命。続く、海部俊樹氏(818日)も2年2カ月ちょっとだ。

3188日も続いた安倍政権を引き継いだ菅首相もわずか1年で退陣へ追い込まれた。これまでのジンクスを踏まえれば、次の政権ももって1?2年ではないかというわけだ。

そこに加えて、早稲田大学法学部卒業の岸田氏には「早稲田の呪い」もささやかれる。早稲田大学は東京大学に次いで多くの首相を輩出しているが、戦後で長期政権を維持できた人がいないというジンクスがあるのだ。実際、石橋湛山氏(65日)、竹下登氏(576日)、海部俊樹氏(818日)、小渕恵三氏(616日)、森喜朗氏(387日)、福田康夫氏(365日)、野田佳彦氏(482日)と、こちらも海部首相の約2年2カ月が最長だ。

これまでの早稲田OB首相と同じ道を辿ってしまうのではないか、と心配する声もあるのだ。

■平成以降、外相を経験した首相は2年もたない?
また、「平成以降の外相経験者首相は2年もたない」というジンクスもある。

日本では外務大臣経験者が首相へステップアップするというキャリアパスが多い。日本のリーダーは、とにもかくにもアメリカとの安定的な関係構築が最重要課題なので、外相として外交経験を重ねた人が首相に繰り上がるのは当然の流れなのだ。その代表が、吉田茂氏や岸信介氏である。

しかし、そんな“首相コース”も平成に入ると輝きを失った。

宇野宗佑氏(69日)、宮澤喜一氏(644日)、羽田孜氏(64日)、小渕恵三氏(616日)、そして麻生太郎氏(358日)と、「外相経験首相」の政権は2年ももっていない。そこで、第二次安倍政権時、2012年12月から2016年8月という長きにわたって外務大臣という要職に就いていた岸田氏が首相になった際にも、このジンクスが発動するのではと見る向きもあるのだ。

「バカバカしい、そんな話があてになるか」と冷笑する人も多いだろうが、口にしている人たちも同様であくまで「ネタ」として楽しんでいる感じだ。もちろん、筆者も信じていない。

ジンクスも何もそもそも、日本の首相は「短命」がデフォルトだからだ。

■短命政権が多すぎる問題の根本には、マスコミ依存?
戦後の首相は菅氏まで含めて35人いるが、彼らの在任期間を平均すると2年そこそこ。1000日を超える小泉氏や安倍氏の方が「異常」であって、1年や2年で退陣に追い込まれる首相が圧倒的に多い。石を投げれば短命政権に当たるので、先ほど述べたような、ほとんどのジンクスも当てはまるというわけだ。

例えば、ちょっと前に、菅首相が頑なに公邸住まいをしないということで注目を集めた「首相公邸に入居すると短命政権」というジンクスがわかりやすい。

これは、2002年にできたこの公邸に、小泉氏(途中入居)、安倍氏以外、5人の首相が就任後に入居したがみんな短命だったということで、まことしやかにささかれた。先ほども申し上げたように、そもそも小泉氏、安倍氏以外の首相はみんな短命なのだ。しかも、今回は入居していない菅首相が短命で終わったことで、このジンクスは完全に崩壊している。

さて、そこで次に気になるのは、なぜ、こんな「短命ジンクス」が量産されてしまうほど、日本の首相は短命が平常運転となってしまったのかということだ。

専門家によれば、小選挙区制度を導入したせいだとか、派閥政治が悪いなどさまざまな分析がある。また、そもそも自民党総裁の任期が短いことに加えて、党の長老たちが世論を見て、首相の首を挿げ替えられるというシステムがある以上、短命なのはしょうがないと言う人もいる。
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