核融合反応は太陽をはじめとする星々が生み出すエネルギーの源。水素など軽い原子種同士が融合して重い原子へと変わる際、膨大なエネルギーが生まれる。
核融合反応の燃料となる重水素とリチウムは海水にもわずかながら含まれている。
このため、この反応を応用した核融合発電は、持続可能で二酸化炭素(CO2)も排出しない夢のエネルギーとして実用化が期待される。(編集委員・田中弥生)

「2020年度にプラズマのイオンと電子の温度が共に1億度Cというマイルストーンを達成し、核融合研究は次のフェーズに入った」と、
自然科学研究機構核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の居田克巳教授は強調する。

核融合発電には、超高温のプラズマを長時間かつ安定して維持する必要がある。
同研究所はコイルをらせん状にひねってドーナツ型の磁場を作ることでプラズマを容器に閉じ込める世界最大級の「ヘリカル装置(LHD)」を使い、高温のプラズマをつくる研究を進めている。

4月、居田教授らの研究グループは、「水素同位体混合プラズマの乱流」と「突発型不安定性」という二つの研究成果を発表した。
乱流はプラズマの中にできる渦。これまで温度上昇を妨げる悪者のイメージだったが、将来の核融合発電で燃料として用いる重水素と三重水素を、
軽水素と重水素で模擬する水素同位体混合プラズマの物理実験で、乱流がプラズマをかき混ぜて同位体を均一にするプラス効果があることを発見した。

一方、突発型不安定性は地震や火山の噴火のようにいつ起こってもおかしくないが、いつ起こるか分からない性質のこと。
正確に予知できなくても、起こりそうな幾つかの条件は分かっている。居田教授らは、磁場で閉じ込めたプラズマの一部が突然失われる突発現象の前兆となる変化を世界で初めて明らかにした。

では、核融合発電はいつ実現するのか。居田教授は「1億度C達成は一里塚。今は課題を見つけ、クリアにするための研究を進めている段階」と説明する。
核融合研究は同研究所の「ヘリカル方式」のほか、プラズマ中に電流を流す「トカマク方式」、レーザーを用いる「レーザー方式」があるが、
それぞれ温度や持続時間など一長一短。「現段階ではどれも100%優れているとはいえない」と居田教授。

核融合発電の最大の魅力は石油やウランのように、燃料が地域に偏在しないこと。ただ、海水からリチウムを取り出すには相当な費用がかかるため、実用化には国策としての推進が不可欠といえる。

一方、核融合反応の応用は発電だけではない。
反応の過程で生まれる中性子は、陽電子放射断層撮影(PET)に使われる短寿命の放射性物質など、医学分野で潜在ニーズが大きい。エックス線(X線)が通らないコンテナ検査にも応用できる。

プラズマの性質はまだ十分解明されていない。ただ世の中には物性物理が完全に理解されていなくても、実用化されているものはある。
「プラズマをどこまで理解すれば制御できるかはまだはっきりしない。しかし解明が進めば、実用化に前進することは間違いない」(居田教授)。

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核融合炉は「2020年代に必ず実現」
―― 「危機管理」は、電力供給についても言えますね。

高市: 私が「危機管理投資」と言っているのは、これだけのデジタル化の中で、消費電力量が半端なく増えていくからです。
エネルギー基本計画の草案を見たら、とてもこれで2030年の日本の産業や生活に必要なエネルギー供給を賄えないと思いました。
そこで、文藝春秋には小型モジュール原子炉(SMR)について書きましたが、私の視野に入ってるのは実はそれだけではありません。
SMRは核廃棄物が出てしまいます。ただ、小さい炉なので、それを地下に立地させることで安全を担保します。
私が本当に見据えているのは核融合炉です。イーター(ITER=国際熱核融合実験炉。
25年に実験炉を運転開始し、35年に核融合反応を起こすことを目指している)には中国やフランスも入っているし、ああいうのにお金をつぎ込むのであれば、
核融合炉は遅くとも2035年までに実現すると言われますが、私は、もっと早いと思っています。2020年代に必ず実現すると思っています。
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