新型コロナウイルスの感染確認は、なぜ急速に減少に転じたのでしょうか。「第5波」で東京都では、
8月中旬に1日あたりの感染確認が6000人にせまりましたが、10月4日には11か月ぶりに100人を下回りました。

全国でもピーク時の25分の1以下となっています。その理由について5人の専門家の見方です。


東京都のデータによりますと、2回のワクチン接種を終えた人は、8月10日の時点で50代が18.7%、40代が11.4%などと低い状態でした。
一方で、緊急事態宣言の期限だった9月30日の時点では50代が69.4%、40代が58.9%などと上昇しました。

さらに30代で49.1%など、若い世代でも高くなってきています。

また、2回のワクチンの接種を終えた人は、政府のデータでは9月中旬には全人口の50%を超え、高齢者では90%近くになっています。
特に高齢者では接種が先に進んだため、これまでの感染拡大では多かった医療機関や高齢者施設での高齢者の感染が大幅に減ったとみられています。


専門家会合メンバー 国際医療福祉大学 和田耕治 教授

ワクチンを多くの人が接種したことや、さらに涼しくなって冷房の効いた室内での活動が減って人と人との距離が確保されやすくなったという季節的な要因も考えられると思う。
ただ、複数の要因がそれぞれどの程度感染減少に貢献しているか、数値として示すことはなかなか難しいと考えている。

これから冬にかけて気温が大きく下がってくると、感染が再び広がる可能性がある。ワクチンや感染によって免疫を獲得している人の割合が比較的少ない
10代後半から20代の若い世代が感染の中心になり、そこからワクチンを接種していない中高年層に感染が広がり、重症化してしまうという流れが懸念される。


感染症に詳しい長崎大学熱帯医学研究所 山本太郎 教授

公表される感染者数が、実態と比べてどの程度妥当なのかということの検証がないと減少要因についても正しく評価ができないと考えている。
ただ、ワクチン接種の広がりや感染を経験した人が増加したことによって、集団の中で免疫を獲得している人の割合が増えてきていることは確かだと思う。

これからコロナが日常的にあっても人的、社会的、経済的に許容できるレベルに抑えられる社会を目指すのだとすると、
どこが許容できるレベルなのか議論することが必要だ。感染者の数を指標として流行状況を評価するのではなく、
重症者や亡くなる人の数の推移といった指標に重点が移っていくフェーズに入りつつあると考えている。


専門家会合メンバー 京都大学 西浦博 教授

減少要因については現在、分析している途中だが、1つ言えることは、連休などがあると1人から何人に感染させるかを示す指標の
『実効再生産数』が上昇する傾向が見て取れ、緊急事態宣言の間でも上昇していた。普段会わない第3者と会う、遠出をして飲食するというような、
ひとりひとりの接触行動が2次感染に寄与することは間違いないと考えている。

今後、ワクチン接種が進んだとしても無秩序に接触が起これば必ず流行が起こると思う。冬に向けて準備が必要だ。


専門家会合座長 国立感染症研究所 脇田隆字 所長

夜間の繁華街での人出の減少やワクチン接種が進んでいることが要因として分析されているが、それだけではこの減少の速度は説明できない部分がある。
今回の感染拡大では、若い世代の間で増えた感染が、ワクチンの効果などで高齢者に移行せず、『若者で増えて若者で減った』という動きになった。

複数ある要素がそれぞれどの程度、感染減少に関わっているのか十分に解明できていないので、引き続き分析したい。
新型コロナウイルスのゲノムを随時分析しているが、感染が急増していたときと急速な減少が見られる現在のデータを比べて
ウイルス自体に大きな変化があるわけではない。ウイルス自体が弱毒化しているということは現時点ではないのではないかと考えている。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20211007b.html