焼津港(静岡県焼津市)で水揚げされたカツオを無断で抜き取ったとして、窃盗の疑いで水産加工会社役員ら3人が逮捕された事件で、県警焼津署は12日、同容疑で、焼津漁業協同組合職員の吉田稔容疑者(40)=焼津市東小川2=を逮捕した。この事件の逮捕者は4人目。県警は同日、焼津漁協を家宅捜索した。

 吉田容疑者は、11日午後3時ごろ、漁協幹部職員と2人で焼津署に出頭。関係者によると、容疑を認めており、「事件に関わっていた」とも話している。
 水産物の適正取引推進などが使命である漁協の職員が、水産物の窃盗に加担した疑いが浮上した。県警は、他に関わった人物がいないか捜査している。
 逮捕容疑は4月30日、漁船が焼津港に水揚げした冷凍カツオ4トン(計約74万円相当)を、既に逮捕されている水産加工会社「カネシンJKS」(同市浜当目)常務取締役の奥山善行容疑者(47)ら3人と共謀し、同港の魚市場から盗んだとされる。
 署によると、吉田容疑者は、市場で水揚げされた魚の荷さばきや計量を担当する責任者だった。窃盗の際には、奥山容疑者と共に、運送会社「焼津港湾」(同市野秋)社員の白鳥賢(47)と杉山智良(43)の両容疑者=いずれも窃盗の疑いで逮捕済み=に指示し、コンテナに入ったカツオをはかりに通さず、トラックに積み込ませて抜き取ったとみている。
 吉田容疑者は窃盗に絡み、奥山容疑者から金銭を受け取っていたといい、署は受け取った額や、どのような性質のものなのかなどを調べている。
◆以前から窃盗のうわさ
 カツオのまちとして知られる焼津市の焼津港で起きたカツオ窃盗事件は、市場を管理する焼津漁協の職員が事件に関与したとして、窃盗容疑で逮捕されるという局面を迎えた。漁協関係者によると、以前から市場内で窃盗が行われていたとの話もある。漁協は全容を明らかにするため、幹部や顧問弁護士など6人でつくる調査委員会を立ち上げた。
 漁協幹部は取材に「真実を全て明らかにするために調査していく」と話した。
 逮捕された吉田容疑者を知る関係者は、「気が弱い性格。窃盗を指示していたとは思えない」と話す。別の関係者は「本人は(業者の)補助をしてお金をもらったという思いが強いと思う」と話した。
 一方、奥山容疑者の弁護士によると、奥山容疑者は「窃盗の指示はしていない。カツオを買い取るように押し付けられた」と供述している。

東京新聞
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