bizSPA 10.21
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「大学は勉強せずにサークルばっかりやってました」と語る人は少なくない。だが近年、大学のサークル加入率が減少し、コロナの猛威でサークルは窮地に追い込まれた。大学生の青春の舞台は、このまま消えてしまうのか……。

●コロナ規制で絶体絶命!加入率とサークル数が激減
大学のサ―クルが存続の危機に瀕している。コロナ禍で新歓や活動が制限されて1年半が経過し、4年間で人が入れ替わるサークルにとって、そのブランクは致命的だ。全国大学生活協同組合連合会の2020年の調査(全国30大学の11,028人が回答)によると、1年生(調査当時)のサークル加入率は48.7%と、前年の82.8%から34.1ポイントも下落。新入生の半数以上がサークルに入っていなかったという。

大学2年生の裕太さん(仮名・筑波大)は昨年の春を「そもそも大学に行けてないし、そのうち終息するだろうと甘く見て、オンラインなら無理に入らないでいいやと思っていました」と振り返る。

「コロナが長期化するとわかり、焦って音楽制作サークルに入ってみたけど、活動といえばチャットに参加する程度。上級生は楽しそうだけど自分は誰も顔を知らないし、空気になじめなくて1か月もせずにフェードアウトしました。新歓コンパなどの通過儀礼が禁止されて大学には恨みすらある」

●「自分が卒業したら誰もいなくなってしまう」
サークル活動につきものの飲み会は禁止。早稲田大では、飲み会をしたサークルを3か月活動停止とする貼り紙が掲示されている

加入率が減れば、サークル数もすぼまる。早稲田大の情報誌『マイルストーン』を参照すると、サークルの掲載数は2017年には873だったが、2021年には635になり、約3割減っていた。

4年生の未希さん(仮名・法政大)が代表を務めるスポーツ系サークルでは、昨年の新入生はゼロ。今年は5人仮入会したが、定着しなかった。週1の練習に出るのは自分一人のみで、卒業したら誰もいなくなってしまう。

「オンライン練習でも前向きに励んできましたが、直接会っていないので、やめやすくなってしまったように感じます。以前は体育館で毎週顔を合わせて軽く声をかけれたことも、メッセージの文面で伝えるのはきつく感じられそうで満足に指導もできなかった。50年を超える伝統のあるサークルなのに先輩方には本当に申し訳ない」

●「主導できる上級生がいない」
100人規模の広告サークルに所属する3年生の剛さん(仮名・明治大)は、運営ノウハウの継承に頭を悩ませていた。

「学祭でステージショーを主催してきたのですが、主導できる上級生が誰もいないんです。2年生はコロナが落ち着いた昨年秋から入ったので1.5年生のような状態で、3年生はコロナ前を知っているとはいえ、当時1年生なのでノウハウまでわからない。それで今年も開催を断念しました。合宿も追いコンもできず、卒業生との縦のつながりも薄れました」

10月から緊急事態宣言が明けても、サークル活動の制限は続く。全国の主要大学30校を調べてみると、総じて施設利用や大会出場は申請制で、会食や合宿は禁止とされていた。サークルにとって一大イベントの学園祭も、東大や立教などは今年もオンライン開催を採用している。

「練習には大学に毎回届け出が必要で、人数は1回10人程度と制限されています。今年も学祭はオンラインなので、もう2年も人前でライブができていない。引き継ぎも不安です」(アカペラサークル・東工大2年生)

●サークル規制の背景に社会の目と保護者の声
なぜ大学はここまで厳重な措置を講じるのか。都内某私立大学の学生課職員が、匿名を条件に大学側の事情を聞かせてくれた。

「大学施設で感染者が出てクラスター認定されると、施設が一定期間利用停止になる。それで授業に支障が出るのを一番懸念しています。そうなると世間からも叩かれますし、保護者からのサークル活動の禁止を求める声も多い。大学は世間や保護者が納得するようなリスクを最小限にした判断をしなくてはなりません。決してサークルを規制したいのではなく、感染拡大しない範囲で活動を守るルールなのです」

朝日新聞と河合塾が今年6〜8月にかけて655大学(回答率85%)を対象に行った共同調査「ひらく 日本の大学」によると、各大学の学長が大きな課題と考えているのが「課外活動の実施」で73%と最も多かった(以下リンク先で)。


各大学は春の新歓活動の制限。早稲田大では入学式には人があふれるほどサークル勧誘が行われていたがコロナで禁止となった
https://news.yahoo.co.jp/articles/df27384661b186d8ce9d6bb5fe0d0c90774d0810/images/004