https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97420.php
<大麻には、運動を楽しむ内なるメカニズムを呼び醒ます効果があり、多くのアスリートが使っている。自らの体験も含め、その使用実態を本にした著者が語る>
 もしかすると、大麻がアメリカにおける運動ブームの火付け役になるかも知れない。大麻の常用者と言えば、けだるげなイメージが一般的だ。
だが、先ごろアメリカで刊行された『ランナーズ・ハイ』という本によれば、必ずしもそうではないらしい。
アマチュアかエリートかを問わず、多くのアスリートが運動目的で大麻を使っている状況が取り上げられているのだ。
著者は調査報道ジャーナリストのジョサイア・ヘス。運動と大麻についての一般的な思い込みをひっくり返されるような本だ。
以前はまるで運動に興味がなかったのに、大麻のおかげでウルトラマラソン(通常のマラソンより長距離または長時間走るマラソン)のランナーになったというヘスに、
本誌アリストス・ジョージャウが話を聞いた。

──このテーマを掘り下げ、本を書こうと思ったきっかけは?
個人的な話だが、食用大麻のおかげでランニングにはまったからだ。20歳代までは体を動かすタイプではまったくなくて、運動にも競技にも興味がなく、そもそもスポーツに関心がなかった。
高校だと体育会系の連中にはまるで太刀打ちできないような、いかにも芸術志向で軟弱な若者だった。
ところが大麻を使うようになって状況は激変した。もっと走りたいと思うようになった。走ることに夢中になったんだ。

■愛用者はあらゆるスポーツに
最初の数年は街中を走っていたけれど、それから山道を走るトレイルランニングを始めた。
たくさんのトレイルランナーやたくさんのウルトラマラソンのランナーと出会う中で、大麻人気が高いことを知った。
利用者の大多数は走る前や、一種のタブーではあるが試合の途中に、食用大麻や電子タバコ、または普通のタバコのような形で大麻を摂取している。
あらゆるスポーツで大麻が広く使われており、プロのスポーツ選手の多くも大麻を使っていることを知って「ほとんど報道されていない事実だ」と思った。

もう1つの理由は、内因性カンナビノイドといわゆる自然な「ランナーズ・ハイ」の背後にある科学について学んだことだ。
エンドカンナビノイドは体内で作られる一種のカンナビノイド(大麻に含まれる化学成分)で、30分くらい有酸素運動をした後に脳から放出される。
これは進化の観点から見ると、ガセルを追いかけるといった場合に長距離を走る動機を人間に与えるためのもので、痛みが軽減されるとともに気分が高揚する。

──あなた自身が走る時に感じる大麻の効果とは?
よくあるけだるそうな大麻常用者のイメージは、冷戦期の麻薬撲滅運動のプロパガンダの置き土産だ。確かに、あまりにも大量の大麻を摂取した場合には現実に起こりうる。
個人差はあるが、大麻は少量摂取であればエネルギーや多幸感、バランス感覚や集中力を高め、筋肉の協調運動もよくなる。
※略
天然のランナーズ・ハイの時の体内と同じで、大麻にも抗炎症作用により痛みを軽減する効果がある。
また大麻は、痛みに対する感情のレベルにも影響を及ぼす。
(大麻を摂取しても)痛みを消してくれるわけではないので痛みの存在は感じるが、痛みに対する心持ちを変えてくれる。これは他の物質ではできないことだ。
イブプロフェンでも無理だし、オピオイドでもできない。

大麻が運動に対してもつ3つ目の、そして最大の効果は、少なくとも私や、話を聞いた多くの人々ではそうだが、心理的なものだ。
人が運動をしない理由はいくらもある。だが私の思うに、その多くは自分に対して抱いているイメージや、運動という行為へのイメージに端を発している場合が多い。
人は運動について、面倒だとか大変だとか、何か乗りこえなければならないものだと考えがちだ。
私の場合、大麻はそういう思い込みをがらりと変えてくれた。運動は1日の生活の軸となり、運動することが一種のごほうびとなったのだ。
※略

それはモチベーションを促進する触媒となりうる。私が初めて大麻を使ったときがそうだった。
体を動かしたい気持ちが湧きあがり、心と身体のつながりを感じて興奮を覚えた。
エクササイズをやる気が起きない人も、事前に少量の大麻を使えば、もっと簡単に、もっと楽にエクササイズに取り組むことができると思う。

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