政府は、子ども政策を一元的に担う行政組織「こども庁」の設置について、2023年度以降に先送りする方向で調整に入った。関係省庁の法律の分担や事務の移管業務の調整が難航しているためで、当初予定していた22年度中の設置は難しいと判断した。

 設置時期の延期にかかわらず、政府は来年の通常国会に関連法案を提出するため、準備を進めている。同庁の創設を議論する有識者会議の意見を受け、年内には運営に関する基本方針を取りまとめる。

 こども庁は、児童虐待や貧困問題など、子どもを巡り、複雑化する政策課題に総合的に対処するため、複数の省庁にまたがる政策を一元化して所管することを目指す新組織。首相直属機関として、内閣府の外局とし、専任の閣僚を置く予定になっている。

 同庁創設は、内閣府や文部科学省、厚生労働省の3府省にまたがる子ども政策を問題視した菅前首相が、持論とする「縦割り打破」の一環として提唱し、今年春以降、推進してきた。

 岸田首相も1日の記者会見で、同庁設置に取り組む考えを示し、設置に向けた準備を進めていた。

 しかし、関係省庁間の調整や地方自治体への事務の移管業務の調整などが手間取り、設置時期を23年度以降にする方向で検討を進めることになった。9月以降、自民党総裁選や衆院選が行われ、政府・与党内での議論が停滞したことも影響した。岸田内閣への交代で、内閣の取り組む政策としての優先度も下がったとみられる。

 省庁間の調整では、3府省に所管が分かれる幼稚園や保育所をまとめて所管する「幼保一元化」が焦点となっていたが、当面見送られることとなった。文部科学省は所管する幼児教育を引き続き担当する。

 こども庁は就学前の子どもと保護者への支援を行うことになる方向で調整している。

 こども庁の専任閣僚には子どもに関する政策について他省庁に要請できる「勧告権」を与え、強い司令塔機能を持たせることも検討し、同庁設置法案にも明記する方向になっている。子どもや家庭環境に関する情報を横断的に把握するためのデータベースを構築し、データ収集、分析により、必要な施策の検討も行う。

読売新聞 2021/11/20 15:00
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211120-OYT1T50090/