新型コロナウイルスの新しい変異株「B.1.1.529」(オミクロン株)を発見して報告した南アフリカ政府は27日、「優れた科学は評価されるべき」なのに、実際には各国政府が南アフリカをはじめとするアフリカ南部諸国への渡航制限を強化しており、自分たちはむしろ「罰せられている」と反発する声明を出した。

南アフリカ外務省は声明で、各国による渡航制限を強く批判し、「優れた科学は罰せられるのではなく、称賛されるべきだ」と述べ、各国の渡航制限はまるで「南アフリカの優れたゲノム解析技術や、新しい変異株を他国より素早く検知する能力を罰しているに等しい」と反発した。

同外務省はさらに、これまでの他の地域で変異株が発見された際の各国の対応は、今回とはまったく異なっていたと指摘した。

南アフリカの保健当局は今月24日、変異株「B.1.1.529」について世界保健機関(WHO)に報告した。WHOは26日、「B.1.1.529」を「懸念される変異株」(VOC)に指定し、「オミクロン」と名付けた。

WHOは声明で、オミクロン株には「多数の変異がみられ、その中には懸念すべきものもある」とし、初期段階の証拠では再感染リスクの増加が示唆されていると説明した。

これまでにイギリスをはじめ複数の国で感染者が確認されており、多くの政府がアフリカ南部諸国からの入国を制限している。


「先進国のせい」
アフリカ連合(AU)のワクチン供給担当、アヨアデ・アラキジャさんはBBCに対して、オミクロン株の出現は先進国のせいだと話した。

「この状況は起きるべくして起きた。世界がワクチン接種を公平に、かつ素早く展開できなかったせいだ。世界の金持ち国が(ワクチンを)ためこんだせいだ。正直言って、まったく受け入れがたい」とアラキジャさんは言い、「一連の渡航制限は科学ではなく、政治によるものだ。間違っている(中略)この変異株はすでに3つの大陸に存在しているのに、なぜアフリカに閉ざしているのか」と批判した。

南アフリカでは現在、人口のわずか24%しかワクチン接種が完了していない。

オミクロン株の感染者はこれまでに、欧州ではイギリス、ドイツ、ベルギー、イタリアで確認されており、チェコ共和国でも疑わしいケースが見つかっている。

ほかにもボツワナ、香港、イスラエルでも確認されており、イスラエル政府は28日から2週間にわたりすべての外国人の入国を禁止した。

オランダ当局は27日、ヨハネスブルク発アムステルダム行きのオランダ航空機に乗った乗客の内61人が新型コロナウイルスに感染していると確認され、空港近くのホテルに隔離されていると明らかにした。

各国が新しく導入した渡航制限の一部は次の通り。
イギリスは28日午前4時から、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニ、アンゴラ、モザンビーク、マラウィ、ザンビアの計10カ国からの入国者を、10日間のホテル隔離の対象とする。南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニからの渡航者は、イギリスかアイルランドの国民、あるいはイギリスの居住者でなければ入国できない(略)

体の痛みや倦怠感
南アフリカ医師会のアンジェリーク・クッツェー会長はBBCに、南アフリカで確認された症例の症状は軽いものがほとんどだが、変異株に対する調査はまだ初期段階にあると述べた。

「患者の主な訴えは、体の痛みや強い倦怠感だ。高齢者ではなく若者に見られる(中略)これは、病院に直行して入院するような患者たちの話ではない」とクッツェー医師は話した。

アメリカの感染症対策トップのアンソニー・ファウチ博士は、オミクロン株についての報告は「危険信号」だとしつつ、ワクチンには依然として重症化を防ぐ効果があるかもしれないと述べた。

ファウチ博士は、「適切な検査が行われるまでは、(中略)ウイルスから私たちを守ってくれる抗体を、この変異株が回避してしまうのかどうか、まだ分からない」と米CNNに述べた。

(英語記事 Covid: South Africa 'punished' for detecting new Omicron variant)

BBC 2021年11月28日(日) 12時
https://www.bbc.com/japanese/59448885