等身大の日本兵 ある米国人が英語で伝え続ける理由
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2021/12/8 05:30

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オンラインの取材で著書を手にするダニエル・キングさん

太平洋戦争での元日本兵の体験を聞き取り、英語で発信する戦後生まれの米国人がいる。8日で丸80年となる真珠湾攻撃、硫黄島の戦い、そして特攻…。これまで取材したのは105人に上る。かつて激しく戦った敵の記憶をなぜ、伝えるのか。(森 信弘)

 米国テキサス州で暮らす太平洋戦争研究家のダニエル・キングさん(57)。「硫黄島からの手紙」などの戦争映画やドキュメンタリーで旧日本軍に関するアドバイザーを務めている。

 「アメリカでは、かつてのプロパガンダ(政治的宣伝)が今も生きている。日本兵はみんな悪者だと」

 米国でオンライン取材に応じたキングさんは人懐っこい笑顔を見せ、流ちょうな日本語で話した。16歳の夏に日本でホームステイし、日本が大好きになったという。帰国後も日本語を学び、大学卒業後は日本でトヨタ自動車に就職した。

活動のきっかけは1988年、日本人の妻の親戚で、旧日本海軍の潜水艦に乗っていた男性との出会いだ。「アメリカでは聞けない話」に衝撃を受け、戦争体験の聞き取りにのめり込んだ。

人から人へ輪が広がり、日本全国を訪ね歩いた。日本に10年滞在し、米国に戻ってからも日本を訪れた。

 「国を愛し、必ず任務を果たすというのは米国人と同じだと感じた」。米国での「クレイジー」なイメージは、実際と大きく違っていた。

そのギャップを埋めようと、英語で本を書くことにした。だが米国の出版社約30社に依頼しても返事はなく、1社からは「日本兵の話は読まれない」と告げられた。

 それでも情熱は衰えず、2012年に自費出版で「ラストゼロファイター」を世に出した。真珠湾攻撃などに加わった旧海軍のパイロットらを取り上げ、軍服を脱げば、同世代の女性に憧れる等身大の姿を記した。

中心となった一人は、戦闘機「零戦」や「紫電改」に乗っていた兵庫県伊丹市の笠井智一さん(今年1月死去)だ。5回ほど会った。「明るくて気取らず、温かい人。ただ、『撃墜された戦友の死が年々つらくなる』と話していた」と言う。

 本は米国で反響があり、2年間で約1万2千冊が売れた。その後も硫黄島、特攻兵器「桜花」について執筆し、著作は5冊になる。オーストラリアやヨーロッパでも読まれ、父親や祖父にプレゼントしたいというケースがよくあるという。

「一番多い感想は日本兵がモンスターではなく、人間だったと気付いたという声だ」

 キングさんは体験談を体で理解しようと、かつての戦地にも足を運ぶ。硫黄島、サイパン、ペリリュー島…。遺骨収集や日米合同慰霊式にも参加している。米兵が持ち帰った日本兵の遺品を、遺族に返す活動にも尽力してきた。

キングさんは中国、フィリピンで民間人や米兵捕虜に犯罪的な行為をした元日本兵の話も聞いた。中国に出征した男性は「絶対書いてください」と言い残し、2カ月後に病気で亡くなったという。「相手は出版を前提に話してくれた。書かなければ裏切りになる」と語った。

 今は、サイパンの戦いを執筆中だ。戦争の体験者は残り少ない。新型コロナウイルス禍が足かせだが「ぜひ話を聞きに日本へ行きたい」と熱望する。

 「米国人は、コインの表裏のように日米両方の歴史を知ってほしい。日米の理解をもっと進めたい」

太平洋戦争を語るとき、日本軍の特攻を避けては通れない。

 元特攻隊員にも話を聞いたキングさんは「アメリカでは、特攻隊は操縦席に閉じ込められるなどで強制されたと誤解されている」と話す。「みんな国を愛し、母を守るために志願した」とも。

(略)

※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。