本部への家宅捜索から約3カ月を経た10日、日本大学がようやく記者会見を開いた。理事長として長年君臨した田中英寿容疑者(75)の逮捕後、理事解任など事態が急展開した背景には、文部科学省の強力な指導があったという。日大関係者は「(田中容疑者の)次は文科省の言いなり。自分たちで運営する能力がない」と先行きを不安視する。

 文科省は逮捕翌日の11月30日、加藤直人学長や理事を呼び、口頭で指導した。関係者は「大学をつぶすような勢いだった。みんな震え上がった」と明かす。これがきっかけとなり、12月1日に臨時理事会を開き、理事長の解任決議を行う運びとなった。
 ところがその後、田中容疑者は理事長を辞任する一方、理事職の継続を希望。日大関係者によると、臨時理事会は紛糾し、加藤学長を除く理事全員が辞任届を出し、田中容疑者にも理事の辞任届を出してもらうことが決まった。
 しかし、田中容疑者が辞任届の提出を拒否したため、3日の定期理事会で解任決議に至ったという。一方、同容疑者の周辺関係者はこれを否定。「文科省が理事解任を大学側に迫ったからだ」と話す。
 臨時理事会では、付属病院をめぐる背任事件での被害届提出や損害賠償請求訴訟の検討、田中容疑者の賞与と退職金の保留も決定したが、これらも文科省の指導によるものだという。周辺関係者は「理事長が健在だった時はごまをすり、今度は文科省の顔色をうかがっている」と理事会の体質を批判する。
 会見で、主体的に田中容疑者の解任決議ができなかった理由を問われた加藤学長は「学内のさまざまな意見を配慮した」と釈明し、同容疑者や文科省の動きについての言及は避けた。
 日大関係者は「これまでの利権体質から抜け出さないといけない。健全な大学運営を取り戻してほしい」と訴えた。

時事通信 2021年12月11日09時56分
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