ネオニコチノイド系殺虫剤は昆虫類の神経系に作用するが、同じ節足動物である甲殻類の神経系は昆虫類とほぼ同じだ。となると、宍道湖の魚にとってエサとして重要な動物プランクトンの大部分を占めるキスイヒゲナガミジンコは、もしかしたらネオニコチノイド系殺虫剤の影響を受けるかもしれない。日本では水田用のイミダクロプリドというネオニコチノイド系殺虫剤が、1992年11月に初めて登録された。従って日本でネオニコチノイド系殺虫剤が最初に使用されたのは、1993年の田植え期となる。

 宍道湖では国土交通省出雲河川事務所によって、毎月、湖心で動物プランクトン調査が行なわれている。そのデータを確認したところ、まさに1993年5月に動物プランクトンが激減し、その後回復の兆しがなかった(図6)。

 その原因がネオニコチノイド系殺虫剤なのか、動物プランクトンのエサとなる有機物(植物プランクトンや生物由来の有機物)が減ったからなのか。

 そこで我々は1993年5月を境とする前後約10年で、宍道湖湖心部表層で毎月観測されたCOD値(水中の有機物量を表す数値)がどのように変動したかを確認した。結果、動物プランクトンが急減した前後でCOD値はほとんど変わっていない。つまり動物プランクトンのエサは減っていないのに、1993年5月のネオニコチノイド系殺虫剤使用開始のタイミングを境に激減していたことになる。やはりネオニコチノイドが怪しい。

 節足動物であるエビ類の漁獲量を調べると、1993年に急減し以後も回復せずに低レベルで推移するという、動物プランクトンと酷似したパターンを示した。「エビ類」とあるように複数種が混在しており、それらが淡水産か汽水産かは出典からは分からないが、いずれにしてもその落ち込みは極めて目立つ。

 次にウナギのエサを含む宍道湖の底生動物の状況に注目する。

 宍道湖ではウナギも1993年を境に漁獲量が激減したが、ウナギのエサは動物プランクトンではなく、エビ類やゴカイ類などの底生動物だ。著者は大学の卒業研究で、1982年夏季に宍道湖の248地点から採取された堆積物を用いて、どのような底生動物がどれくらい生息しているのか調査した。今回の研究では、1982年の調査地点の中から39地点を選び調査した。表1には1982年と2016年の結果に加え、本来生息している塩分と食性も示した。ここでの「低塩分」は宍道湖の通常の塩分、「高塩分」は海側に隣接する中海の通常の塩分が主な生息塩分域であることを示す。

 節足動物はネオニコチノイド系殺虫剤が使用される以前の1982年と比べて、使用開始後の2016年はすべての種で大幅に減少していた。ウナギのエサは先述のエビ類を含む甲殻類やゴカイなどの環形動物だが、高塩分に生息する種類(ヤマトスピオ、ヒガタケヤリムシ)は2016年のほうが多く、低塩分種(イトゴカイの仲間など)の減少が目立った。高塩分種は幼生が中海から供給されるが、低塩分種は宍道湖内で生活史が完結する。

 これらの結果から、宍道湖では魚のエサとなる底生動物も一部が大幅に減少しており、昆虫を含む節足動物も減少していた。そしてエビ類漁獲量の経年変化から、減少原因が発生したのは1993年と推定される。また節足動物以外の底生動物では、軟体動物のシジミには影響は見られなかったものの、環形動物では食性にかかわらず淡水から宍道湖内で生活史が完結する動物が減っていた。水田で使用され、淡水流入河川から供給されるネオニコチノイド系殺虫剤が原因であれば、底生動物のこのような変動をうまく説明できる。

 底生動物は湖底に積もる堆積物を食べる種類もいるので、堆積物の有機物濃度も調べた。1997年と2016年を比較した結果、有機物濃度は現在のほうがむしろ増加していた。つまり、ウナギのエサとなるエビ類やゴカイ類のエサは減っていないのにウナギが減っており、やはりネオニコチノイド系殺虫剤の影響が疑われるのである。もしこの減少が1993年の田植え期(=ネオニコチノイド系殺虫剤が初めて使われたとき)ごろに起こっていたことが特定できれば、底生動物の減少もネオニコチノイド系殺虫剤が原因である可能性が高くなる。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/360768/112600064/?P=2

【農業】ネオニコ系農薬問題 減農薬の証し「特別栽培米」にも使用 不漁、ハチの大量失踪、昆虫の減少、トキの絶滅危惧 [かわる★]
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1639219817/