読売新聞 12/14(火) 15:00

 ふるさと納税が浸透する中で、東京23区では今年度、区民税の約5%にあたる計約531億円が他自治体に流出した。多くの人が寄付先を選ぶ年末を控え、区側も新たに魅力的な返礼品を用意するなどして、PRに懸命だ。(水戸部絵美)

料亭遊びも
 「これだけの財源を持っていかれれば、何かしらの対応が必要だ」。今年度、区民税約10億円が減収となった東京都台東区の越智浩史・企画課長はそう強調する。10月から返礼品を導入し、本格的にふるさと納税を呼び込むことを決めた。

 区内には、上野や浅草など日本有数の観光地があるが、新型コロナウイルス禍で観光客が激減し、地元経済は苦境に立たされている。返礼品には、オーダーメイドの人形や区内醸造のクラフトビールのほか、銀器や浅草切子といった工芸品の制作体験など約360種類を用意。奥浅草にある料亭でのお座敷遊びといったユニークなものもある。

 ふるさと納税は、「返礼品競争」の過熱などが疑問視された経緯があり、区は冷ややかに見ていた。しかし、コロナ禍前と比べて観光客が7割減る中で、ダメージを受けた地場産業の回復を目指すため、本格参入を決めた。

 上野公園内の老舗レストラン「上野精養軒本店」は、冷凍カレーなどのグルメギフトセットや食事券などが返礼品となる。秋元秀夫総支配人は「コロナ禍で大きな打撃を受けたが、全国の人にPRする絶好の機会」と期待する。

 区によると、昨年度の寄付額は約3400万円だったが、今年度は10月の返礼品導入から1か月余で約1400万円が寄せられた。

 ふるさと納税では、返礼品をもらわなければ自分が住む自治体に寄付でき、使い道を指定することが可能だ。この仕組みに目を付けたのが世田谷区だ。

 昨年度、区民らに新型コロナ対策に充てるとして寄付を募ったところ、約9000万円が集まり、そのうち約75%が区民からの寄付だった。今年からは新たな使途として、子どもの学習支援や、遊び場の拠点整備プロジェクトなどを加え、計17種類の使い道を用意した。区の担当者は「自分の意思で税金の使い道を決めることができるとPRしたい」として、区民にも寄付を呼びかけている。

「赤字」続き
 総務省によると、昨年度、23区で最も多く寄付金を集めたのは墨田区の約7億円で、最少は返礼品を用意していない千代田区の25万9000円だった。ふるさと納税で23区に寄せられた寄付金は計約25億円だった。

 一方で、今年度の減収額は23区全体で計約531億円に上る。2014年度と比べて60倍近くに増えており、「赤字」の状況が続いている。

 地方交付税が交付されている自治体では、住民税が減収となった場合、75%が国から補填(ほてん)される。しかし23区は全て不交付団体で、減収がそのまま区の財政に影響を及ぼすことになる。23区の区長でつくる特別区長会事務局の担当者は、「看過できない状況だ」と訴える。同会は先月25日、補填策の拡充など、制度の見直しを求める要望書を金子総務相に提出した。

 法政大の小黒一正教授(公共経済学)は「そもそも地方を応援するための制度なので、23区のような税収の多い自治体ではふるさと納税に積極的ではなかった。だが、都心部には著名な観光施設もたくさんあり、魅力的な返礼品を作り出せば、寄付を呼び込むことができるだろう」と指摘する。

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