局長経験者はがん首そろえて出世していた。GDP算出に反映される基幹統計データの書き換えを実行した国交省の建設経済統計調査室は、あくまで省内の一部署に過ぎない。都道府県の担当者向けに「すべての数字を消す」などと“虎の巻”まで配布し、書き換えを指示する大がかりな不正を「上」の意見を仰がず、黙って完遂できるだろうか。甚だ疑問だ。

 統計調査室は「情報政策課」内に位置付けられ、さらに同課をつかさどるのが「総合政策局」だ。総合的かつ基本的な方針の企画・立案や各局横断的な施策の取りまとめなどを担う、同省の「筆頭局」である。

「局長ポストは将来の事務次官候補が就く出世コースのひとつ。東大法卒で旧建設省出身のキャリア官僚が、ほぼ地位を独占してきました」(国交省関係者)

 統計調査室がデータの二重計上と過大推計に手を染めだしたのは2013年度から。以来、総合政策局長の経験者は9人。多くは省内ナンバー2の審議官を経て、うち3人がトップの次官に上り詰め、2人は復興庁事務次官に就くなどご多分に漏れず、み〜んな偉くなっていた。

事務次官3人、復興庁事務次官2人

「18年の京都府知事選に勝利した西脇隆俊氏は異例としても、“天下り先”もいずれ劣らず恵まれています。ちなみに、調査室を直接管轄する情報政策課の課長は旧運輸省出身者の独占ポスト。経験者はその後、東京航空局長や新関西国際空港の業務執行役員を任されたり、退職後に小田急電鉄の顧問に迎え入れられた人もいます。悠々自適です」(国交省関係者)

 くしくも書き換えを始めた13年度、第2次安倍政権は悪名高い「内閣人事局」の新設を柱とする国家公務員制度改革関連法案を提出している。幹部官僚の人事権を牛耳り、官邸の意に反すれば左遷の憂き目に遭う「恐怖支配」と、国交省が不正を続けた時期がピタリ重なるのは見過ごせない。

 GDPをかさ上げし、アベノミクスの嘘に加担しながら、黙っていれば順風満帆−−。そんな忖度思考の慣例踏襲が長期不正の根源ではないのか。国交省は会計検査院などの指摘を受け、今年4月に不正をやめたというが、間を置かずに7月1日付で直近の総合政策局長経験者が一斉に霞が関を離れたのも気になる。徹底究明すべきだ。
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