大阪市北区の雑居ビルの心療内科クリニックで男女24人が死亡した放火殺人事件で、患者だった谷本盛雄容疑者(61)=職業不詳=が住んでいたとされる市内の民家から、ガソリンのタンクが押収されていたことが捜査関係者への取材で判明した。クリニックでは谷本容疑者のものとみられるライターが押収されていたことも判明。大阪府警は19日未明、谷本容疑者が事件に関与した疑いがあると判断し、氏名を発表した。逮捕状の請求前に容疑者名を公表するのは極めて異例。

 谷本容疑者は事件当日、ガソリンの可能性が高い液体入りの紙袋をクリニックに持参していたことが分かっている。府警は事件の準備を入念に進めていた疑いが強いとみて、現住建造物等放火と殺人の疑いで詳しい経緯を調べている。

 捜査関係者によると、谷本容疑者の自宅とされるのは大阪市西淀川区の3階建て民家。府警は18日に現住建造物等放火容疑で家宅捜索した際、2階の一室からガソリンのタンクが見つかった。容量は約1・5リットルで、タンク内の液体が少量だけ使われていた。府警は液体はガソリンとみている。

 事件は17日午前10時20分ごろ、「西梅田こころとからだのクリニック」で発生。府警捜査1課によると、谷本容疑者の運転免許証やクリニックの診察券が入った財布が雑居ビル内で見つかった。院内の防犯カメラにも出火当時の映像が記録されており、谷本容疑者が関与したと判断した。

 ◇ライターで着火か

 映像では、谷本容疑者が出入り口近くで紙袋を蹴り倒してしゃがみ込んだ直後に炎が上がっていた。府警は谷本容疑者が付近で見つかったライターで着火したとの見方を強めている。

 府警によると、谷本容疑者は事件後、心肺停止状態で救急搬送された。集中治療で蘇生したが、重度の気道熱傷や一酸化炭素中毒などの影響で重篤な状態が続いている。

 府警幹部は氏名公表に踏み切った理由について、「容疑者の状態から逮捕状を請求できる状況にはなっていないが、事案の重大性を踏まえた」と説明。被害者遺族の感情などにも配慮したことを明らかにした。【安元久美子、郡悠介、沼田亮】

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