安倍元首相の発言がまた物議を醸している。首相在任中のアベノミクスと放漫財政を正当化するためなのか、
赤字国債は国の借金ではなく「背負っているのは日本銀行」などと言い出した。

15日に都内で行った講演で安倍元首相が触れたのは、財務省の矢野事務次官が月刊「文藝春秋」に寄稿した「矢野論文」だ。
〈このままでは借金まみれの日本の財政は破綻してタイタニック号のように氷山にぶつかって沈没する〉とのバラマキ批判に反論する形で、こう話した。

「日本は決してタイタニック号ではない。日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている」

「赤字国債のほとんどは市場を通じて日本銀行に買ってもらった。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ」

「日本銀行は国の子会社。5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する」

 だから、政府がいくら赤字国債を発行しても問題ないというのである。さすがに日銀や財務省の職員は安倍元首相のノーテンキな発想に呆れている。

「建前であっても、中央銀行の独立性を元首相が否定したら円の信認に関わる」(日銀関係者)

「財政法が禁じる直接買い入れを事実上、認めるようなもの。日銀を私物化したアベノミクスの本質が発言に表れている」(財務省関係者)

 いくら赤字国債を発行しても日銀が買ってくれるからOKというのなら、安倍政権下で2度実施した消費税増税も必要なかったはずだ。

 それに、子会社に借金をツケ回して逃げるのは、バブル崩壊後に横行した「飛ばし」の手法である。山一証券はそれで倒産した。
元首相の立場でこんな妄言を繰り返せば円の信認はガタ落ちで、それこそ通貨危機を招きかねない。

■もはや存在が“国難”

 このところ安倍元首相は「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事」とあおったり、
「米艦に攻撃があれば、集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になる」と前のめりになったり、口を開けば問題発言を連発だ。

「権力の中枢から遠ざけられている焦りで、存在感を高めるためにあれこれ物騒な発言をしているのだろうが、百害あって一利なし。
国益のためには、少しおとなしくしていた方がいい」(自民党の閣僚経験者)

 だが、最大派閥の領袖として今後も発言の機会は減りそうにない。首相を辞めて1年半近く経ってもなお、安倍元首相の存在自体が国難になりつつある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/510c5471eab17b4899fe03f0632bbd86874155fe