【ニューヨーク=杉藤貴浩】新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が世界で猛威をふるう中、米国でも1日100万人を超える新規感染者を記録し、働き手の不足など社会に混乱が生じている。ただ、バイデン政権は「ワクチンを打てば症状は軽い」との姿勢で都市封鎖(ロックダウン)などの強い措置は取らず、事実上オミクロン株との共存を図る構えだ。
◆乗員不足で航空便欠航、教師が授業ボイコット…
 6日の東部ニューヨーク。繁華街タイムズ・スクエア周辺では至る所に臨時のコロナ検査所のテントが並び、マスク姿の人々が列を作っていた。あるテントではすぐに結果がわかる迅速検査のキットがなくなり、「PCR検査のみ」との張り紙もあった。
 実際、一部で検査が追いつかないほど米国の感染の勢いはすさまじい。ジョンズ・ホプキンズ大などの集計では3日の新規感染は100万人を超え、従来のピークだった昨冬の3〜4倍の高水準に達した。米疾病対策センター(CDC)の推定によると、オミクロン株の占める割合は年初までの1週間で95%に上った。
 感染拡大によるパイロットや乗員の不足で、航空便は連日1000便以上が欠航。ニューヨークで今月予定されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議や同月の西部ロサンゼルスでのグラミー賞授賞式などの主要行事は、次々と延期に追い込まれた。中西部シカゴでは教員組合が対面授業の中止を求め、年明けから授業のボイコットを続けている。
◆ワクチン未接種多い18歳未満の入院率急上昇
 だが、2年前の感染拡大初期と違い、米政権や大半の自治体は飲食店の営業や移動の自粛といった経済、社会活動の強い規制を求めていない。バイデン大統領は先月のクリスマス前の演説で「ワクチンを接種した人でも感染するかもしれないが、重症化や死亡からは守られている」と強調。ワクチン接種を前提に入国は原則自由で、オミクロン株の広がり自体は完全には防げないとの姿勢をとる。
 背景には、感染者の急増に比べ、コロナによる最近の死者数は1日千数百人とオミクロン株拡大前から横ばい状態という現状がある。死者の大半はワクチン未接種者だ。昨年末にコロナ検査で陽性だったというニューヨーク市の広告業男性(38)は「ワクチン接種済みで症状はなかった。遠方の家族に会うから検査したが、普段なら感染に気付かなかっただろう」と話す。
 ただ、オミクロン株はワクチンの長期的な影響への懸念などから接種率の低い子どもにも拡大。18歳未満の入院率は1カ月前の約4倍と医療体制逼迫ひっぱくの兆候もある。米メディアによると、医師や看護師への感染で東部ニュージャージー州では少なくとも14の医療機関が深刻な人員不足に陥り、一部の専門家は「1月はウイルスの吹雪になる」と警鐘を鳴らしている。

東京新聞 2022年1月8日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/153007