新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、感染症COVID-19のためイギリスで亡くなった人が15万人を超えた。イギリス政府が8日、発表した。
英政府の統計によると、ウイルス検査で陽性が確認されてから28日以内にイギリス国内で亡くなった人数は、8日の時点で15万57人となった。

8日に新たに確認された死者の数は313人だった。
今月2日から8日までの7日間で、陽性確認から28日以内に亡くなった人は1271人。その前の7日間の352人から38.3%と増えており、感染から死に至る人数が増えつつある。

新型コロナウイルスによる死者が15万人を超える国は、アメリカ、ブラジル、インド、ロシア、メキシコ、ペルーに次いでイギリスが7番目となった。

イギリスで8日に確認された新規感染者は14万6390人。イギリスでは昨年末までに、伝播(でんぱ)力の高いオミクロン変異株が感染の主流になっている。


政府の新型ウイルス対策を策定している非常時科学諮問委員会(SAGE)の委員、アンドリュー・ヘイワード教授は、15万人という死者数は「ひどい悲劇だ」とBBCラジオに話した。
「我々はもっと上手に対応できたはずだ。感染の第1波や第2波の時点でもっと素早く対応していれば、多くの死が防げたはずだ。それだけにいっそう悲劇的だ」


ジョンソン首相は昨年5月、2022年春にも、政府の新型コロナウイルス対策について独立調査委員会を立ち上げると発表している。

遺族団体「正義を求めるCOVID-19遺族」の共同創設者、ジョー・グッドマンさんは、
「なぜこの国が世界でも特に高い死者数に見舞われてしまったのか、私たちは答えが必要だ」と呼びかけた。

グッドマンさんはさらに、「オミクロン変異株による死者数の急増が続くのに、見るからにほとんど何の対応もとられていない現状では、
その必要性は緊急性を増している。公開調査は一刻でも始めなくてはならない」と強調した。


オックスフォードシャーに住むカミラ・クラリッジさんは昨年2月、祖母をCOVID-19のため失った。しかも葬儀の夜になって、自分の父親もCOVID-19で危篤だと知らせを受けた。
「おばあちゃんを埋葬して、お葬式から帰宅したと思ったら、夜中の1時に電話で起こされて、(父との)最期のお別れについて考えておいてくださいと言われた」のだと、クラリッジさんは言う。

「ほんとうに悲惨でした。ICU(集中治療室)に入ると、人工呼吸器につながれた人が横たわるベッドがずらずらっと並んでいて……。あまりに管だらけで、どれが自分の父かも分からなかった」

「私たちのこの思いを、15万人もの人の家族が味わってきたなんて、ほとんど想像できない」


<分析> ミシェル・ロバーツ、BBC健康担当デジタル編集長

イギリスで新型コロナウイルスの死者が10万人を超えてから、1年近くがたった。そのほとんどは2回の波で、犠牲になった人たちだ。
2020年の春にいきなり急増してから、秋と冬にかけてじわじわと一定して増え続けて、2021年になった。ワクチンが受けられるようになる前のことだ。

2020年12月8日に、当時90歳のマーガレット・キーナンさんが初めて新型コロナウイルスワクチンの接種を受け、歴史を作った。
これを機にイギリスで全国的なワクチン接種事業が本格化した。

このパンデミックにおいてワクチンの開発と接種は、本当に大成功している。
感染から重症化して死亡に至る連鎖が、ワクチンによって弱まっているからだ。しかしそれでも、死者が出るのは避けられない。

イギリスの死者数は現在15万人を超えた。各国の社会は決して、COVIDー19を無視できないのだと、今更のように念押しされた形だ。
COVID-19は決してなくなってはいない。
https://www.bbc.com/japanese/59925931

https://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/15E0D/production/_122631698_ukdeathsdaily.jpg.webp
https://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/10FED/production/_122631696_ukdeathsaccumulated.jpg.webp

ロンドンのセント・トマス病院の近くにある壁が、新型コロナウイルスのため亡くなった人を追悼する慰霊の場所になっている
https://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/11A5A/production/_122628227_gettyimages-1363278673.jpg