現代ビジネス 1/16(日) 8:02

親が生きている限り続く“永遠の介護”
 「重度脳性麻痺児を抱える家庭は本当にお金がかかります。福祉車両、家のバリアフリー化に数百万円の費用が必要とされます。そして、一番、経済的に厳しいのは、子どもを預ける場所がなく、母親が就労に出ることが難しいことです。

 障害児に支払われる特別児童扶養手当があるにしろ、母親が就労することに比べれば微々たるものです。でも、重度脳性麻痺児がいれば、どこも預かってくれません。仮に預かってもらえたとしても、働きに出られるような時間を確保することは難しいのです」

 と話すのは、重度脳性麻痺児を抱えた坂田英子さん(仮名、40代)だ。

 一般的に障害児家庭には、子どもに支払われる児童手当に加え、特別児童扶養手当が支払われる。障害者手帳1級であれば5万2500円、2級であれば3万4970円だ。

 しかし、それだけで、十分とは決して言えない。国は在宅医療を推進しているが、それは家族の犠牲の上に成り立っていることを理解しているのだろうか。子どもたちの介護は、親が生きている限り続く、“永遠の介護”であることを。

 もちろん、障害を持った子どもの親をサポートする制度は、上記のような手当以外にも、なくはない。ところが、「制度の隙間」に落ちて、そのサポートすら受けられない人もいるのだ。その当事者である坂田さんが続ける。

 「脳性麻痺児の親の経済的負担を軽減させるために、重度脳性麻痺児に支払われる『産科医療補償制度』という制度があります。介護費用として、一時金600万円、20歳になるまで年間120万円支払われます。しかし、そのお金が私の子どもには支払われなかったのです」

 産科医療補償制度とは、分娩に関連して脳性麻痺となった子どもと家族の経済的負担を補償する制度だ。日本医療機能評価機構という団体によって運営されており、補償の原資は、妊娠した人たちが原則として支払う「掛金」によってまかなわれている。言わば、妊娠した人たちによる「助け合い」の制度といえる。と同時に、産科医療の質の向上をする観点から、その原因分析が行うことも制度の趣旨となっている。

 しかし、子どもが重度の脳性麻痺だからと言って、無条件に制度の恩恵を受けられるわけではない。そこには、クリアしなくてはならない「条件」がある。

 制度の基本的な設計としては、32週以上、1400g以上の出産の場合、生まれてきた子どもが重度脳性麻痺であれば、先天性の要因など一部を除いて無条件に補償対象となる。32週以上での出産ならば、本来はそれなりに安全な分娩が可能であり、もし重度の脳性麻痺が子どもにあるとすれば、それは病院側に原因がある…という考え方と言えばわかりやすいだろうか。

 その反面として、早産の子どもが発症した脳性麻痺については「分娩とは無関係」と考えられ、補償から除外する方針がとられていた。そのため、28〜32週未満で生まれた子どもには「個別審査基準」が設けられており、出生時に低酸素状態であったことが認められなければ、補償が受けられなかったのだ。

医学的合理性が認められない規約で補償対象外に
 「私の子どもも早産で個別審査となり、補償対象外となりました。当初はショックでしたが、制度であるから仕方ないと自分を納得させていました。でもやはり、支払われる額が大きいので、補償の対象になるか否かで、その子や家庭の生活の質が変わってきます。

 すごく葛藤しましたが、でも線引きは必要なことは頭でわかっていましたので、そのときは諦めました」(坂田さん)

 しかし、産科医療補償制度についてはその後、同様の病態であっても補償対象と対象外の子に分かれ、不公平感が生じていることなどから、制度の問題点が議論され始め、様々な調査が進められるようになる。

 研究と調査が進められた結果、低酸素状態の有無に関係なく脳性麻痺は発生することが判明した。そして、産科医療補償制度を運営する日本医療機能評価機構(以下、機構)は、早産の子どもについて個別審査基準を設けるというやり方に、医学的な合理性が認められないと発表したのである。結果、2022年出生児からは、個別審査を撤廃することを決めたのだ。

 つまり、出生時に低酸素が認められようが、認められまいが、脳性麻痺児は発生することがわかり、その結果、子どもが早産であっても、補償の対象となることになったのだ。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/5ba406715c8706b7dd254849dbd5ac6da79ac693