ノーマスクで歌って踊って騒いで
 この住民が心配するように、在日米軍に特権的な地位を認めた「日米地位協定」のため、米軍人はもとより家族や基地内で働く人たちもチャーター便で基地に直接入ってしまえば、PCR検査など日本の検疫を受けさせることができない。実際、米軍では日本到着後の検査は実施しておらず、さらに昨年9月からは米国出国前の検査も取りやめている。加えて日本入国後はコロナに感染しても基地内はマスクをつけていなくても自由に出歩くことができたという。これでは感染が広がるのも当然だ。

 前出の地元住民は、まん防が適用される前の在日米兵の様子をこう語る。

「米兵たちはマスクをしないまま5、6人でバーに入って大声で話していたり、クラブにも大勢で繰り出しては男女かまわず日本人に話しかけたりしてました。商売だったり恋愛だったり、それぞれの目的があって米軍と仲良くしたい日本人も多いですからね。日本人たちも一緒にノーマスクで歌って踊って騒いで、ふざけてケンカの真似事をして……。ウイルスをまき散らしているような行為にハラハラしっぱなしでした」

 しかし、住民は彼らの行為に不安を感じつつも、屈強な軍人相手に注意をするのは怖かったという。

「面とむかっては言えないので、『マスクをしなくて平気なのか』と遠回しに聞いてみたら、『基地内でPCR検査を受けているから大丈夫だ。日本人と違ってアメリカ人は普段からあまりマスクはつけないんだよ』と笑っていました。でも彼らが検査を受けていたのか、本当に陰性だったのか、今となっては疑わしいですよね」

“風邪みたいなもの”という認識
 オミクロン株の感染拡大に歯止めがかからないことについて、“当事者”たちはどう感じているのか。沖縄に駐留する米兵に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「我々は日本とアメリカをしょっちゅう行き来していて、日本国内に入るときには2週間の隔離も空港検疫もない。日本で感染者数が落ち着いていた頃、アメリカではオミクロンの感染者が激増していたので、在日米軍基地内で多数の感染者が出るのも時間の問題だと思っていましたね。正直なところ、日本にも影響は出るだろうなという予感はありました。

 来日すると基地周辺の店に遊びに行く軍人は多い。日本ではストレスを発散するために飲むから、そりゃ大声にもなるし、はしゃぎたくもなる。店員からマスクをしていないことを注意されることもありますが、米軍相手に商売をしている店だし、少しくらい無理を言っても大丈夫と思っているので、無視していますね。

 2003年から始まったイラク戦争がきっかけで米軍には入隊希望者も少なくなり、犯罪歴があっても免責して入隊させるようになったんです。もちろん常識のある軍人も多いんですが、刑務所上がりのこうした軍人は素行が悪く、日本に来る海兵隊の中にもそういうヤツがいる。彼らの認識ではコロナはデルタだろうとオミクロンだろうと、“風邪みたいなもの”だし、おとなしい日本人の言うことなんか聞きませんね。

 一応、第5波のときには上官から不要不急の用事がなければ外出するなと言われていましたが、用事があるとウソをついたり、隠れてこそこそと繁華街に出かけたりする人もいましたね」

 ただ日米両政府が9日、在日米軍関係者に対し、10日からの14日間、施設・区域外では「必要不可欠な活動のみ」に制限することを発表し、日本政府がすべての在日米軍関係者には自宅以外でのマスク着用の義務化や、出入国時の検査、入国後14日間の行動制限について厳格に維持・実施するよう求めると、「上官から外出制限やマスク着用について順守するようかなりきつく言われて、さすがに勝手な行動はできなくなった」(先の米兵)という。

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