東洋経済オンライン 2/3(木) 9:01

この連載では、女性、とくに単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、「私は非正規フルタイムで働いているシングルマザーです。離婚してから軽度知的障害とADHDが発覚しました。両親は毒親で絶縁しました。家族から孤立したまま小1の子どもを育てています」とメールをくれた32歳の女性だ。

■多くの非正規労働者が抱える不安

 関西在住、非正規職のシングルマザー三上奈津美さん(仮名、32歳)からメッセージが届いた。添えてある写真を見ると、年齢よりかなり若く見えた。

 筆者は取材希望者を常時受けつけている。精神的に不安定なときに衝動的にメッセージを送る、という人が少なくない。彼女にもそれを感じた。奈津美さんは賃金が低く、先々の雇用が不安定な非正規の仕事であることに悩んでいるようだった。コロナのような有事が起こると真っ先にリストラ対象となりやすく、時間給だと祝日や年末年始などの長期休暇で収入は減る。「これから先のことを考えると不安でたまりません」という心配は、多くの非正規労働者が抱えている。

 奈津美さんはフルタイムで働きながら年収200万円程度と低収入だった。一人娘とアパートに暮らしながら、児童扶養手当やわずかな養育費をもらってギリギリの生活を送っていた。すぐに返信した。LINE通話で話すことになった。

 「非正規なので貧しい状態です。いまは工場で検品の仕事をしていて、生涯で初めて普通に働けています。具体的にはパーツ工場で完成品に傷がないかとか、流れてきた製品のチェックです。子どもを抱えているので半年後働けているのか、来年は大丈夫なのかとか、とにかく不安です」

 不安を抱えるのは、これまで点々とした職場で数々のトラブルを起こしたことが理由だった。現在の職場でやっと平穏に働ける環境を手に入れたが、それを失ってしまったら親子で路頭に迷ってしまうのでは、という不安である。

 「いままで働いてきた職場ではいろいろあって、本当になにかおかしいと病院に行きました。発達障害と軽度知的障害って診断をされました。やっといままで自分に起こったことが納得できました。本当にずっとツライことばかりでした」

 仕事で失敗続きだった奈津美さんは、4年前にADHDと軽度知的障害と診断されている。

 奈津美さんにいままで、どういう状況だったのかを聞いていく。小中学校は勉強についていけなかった。成績は小学校低学年から美術以外、1と2しかなかった。学力があまり問われなかった芸術系の高校、短大に進学。そして、短大生のときに親の勧めでコンビニでアルバイトをはじめた。勉強と同じく、仕事もできなかった。やる気持ちはあっても、求められることがどうしてもできなかった。いつも、怒られている、怒鳴られている、そして人間関係が壊れていく――仕事をはじめてから常になにかに怯え、追い詰められるようになった。

 「仕事は学生時代のコンビニからうまくいきませんでした。マルチタスクっていうんですか。仕事の同時進行が全然できなかったです。1つのことをしていたらそっちに集中しちゃう。レジをやっているとき、お客さんがいなくなったら売り場の陳列とか、掃除とか、全然できない。1つひとつの仕事を覚えることができなくて、レジのやり方もわからないし、怒られているうちに人間関係がどんどん悪化して……」

※続きはリンク先で
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/1471593aa2cbda694b5963b052b4fca06495d291&preview=auto
一人娘とアパートに暮らしながら、児童扶養手当やわずかな養育費をもらってギリギリの生活を送っている奈津美さん(写真:奈津美さん提供)
https://i.imgur.com/71Fnmox.jpg