北海道新幹線の2030年度の札幌延伸に伴い、JR北海道から経営分離される並行在来線・函館線(小樽―長万部間、140.2キロ)に関し、沿線9市町の協議が大詰めを迎えている。沿線自治体は、このうち余市―長万部間(120.3キロ)のバス転換を決定。距離にして約8割が廃線となる計算だ。残り区間の扱いは年内の早い時期に決めるが、決定後も赤字の分担などで曲折が予想される。
 国土交通省などによると、並行在来線の廃線は長野新幹線開業で1997年に廃止されたJR信越線(横川―軽井沢間、11.2キロ)以来、国内2例目となる。
 道内の沿線9市町の30年の人口は計約13万9000人で、18年から約2割減る見通し。鉄道収入も15年度の4.6億円から20年度は2.3億円に減った。分離後の交通体系をめぐり、道は21年4月、(1)第三セクターによる鉄道運行(2)全線バス転換(3)一部鉄道・一部バス転換―の3案を提示。現時点では、7町がバス転換を表明している。
 背景には、沿線自治体が将来負担する巨額の赤字がある。収支予測では全線バスにした場合、分離後30年の累計赤字額は計約70億円。しかし、三セク鉄道にすれば10倍超の計約865億円に上る。
 バス転換を決めたニセコ町の片山健也町長は1月末、「多額の負担をこれ以上、後世に強いることはできない」とし、鉄路廃止はやむなしと判断。倶知安町の文字一志町長も昨年12月に「鉄路のコストの大きさは、先々の世代にわたって改善、軽減されるわけではない」との認識を示した。
 一方、小樽―余市間をめぐり、余市町は鉄路維持を主張。町担当者は同区間の鉄道需要は一定程度あるとし、「大量輸送を迅速に行うには、現時点では鉄路に分がある」と強調する。小樽市は態度を保留し、今月6日から住民説明会を開き検討。今後、余市町などと改めて協議する予定だ。
 道と9市町は今年早期に全区間の方向性を決める。ただ、赤字の分担方法は手付かずで、その後も課題は残る。さらに長万部以南の147.6キロは交通体系の議論が進んでおらず、厳しい状況だ。

時事通信 2022年02月07日07時12分
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