https://www.fnn.jp/articles/-/312721
■ノリが激減…ベテラン漁師も困惑
神戸市の須磨海岸。)
ここでノリの養殖をしているのは森本明さん。この道35年のベテランだ。
森本明さん:一枚の網で900〜1000枚ぐらいついている。5回摘んだ後、これから6回摘みになるんで大きな葉っぱになってます。巻きずしには適してます。節分には、ぜひこのノリで
冬から春にかけて行われるノリの養殖。今まさに最盛期を迎えている。しかし…
森本明さん:これがダメな網です。摘んだ後じゃないの、これ
網にびっしりとついているはずのノリが、まるでバリカンで刈られたかのように、すっかりなくなっているのだ。
森本明さん:以前も(こういうケースが)あったんですけど、ここ近年がひどいですよ。この10年ぐらい、どんどんひどくなってますね

実はここ数年、ノリがなくなる被害が続いている。
兵庫県はノリの生産量が全国3位と、大きなシェアを誇っているが、20年ほど前と比べてノリの収穫量は2割減っている。
森本明さん:今季3500枚の網を張ってるんですけど、そのうち300枚ぐらい、1割位がああいう形の網になってます。なんとも言えないですよね、言葉に表せないです

■「ノリの激減…原因は魚
ノリが消えた理由を探ろうと、兵庫県の水産技術センターが調査に乗り出したが、研究員も頭を悩ませる。
兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:
だいぶ前からノリの栄養塩の問題、栄養が低下して色落ちが発生したり、冬場高水温になってノリの漁期が短縮してしまうことで生産枚数がおちてきてたんですけど…
刈り取る直前になるとノリが短くなってるという現場の感覚があって、その原因がわからなかったんですね

そこで、ノリ棚の下に水中カメラを設置。すると、なにやら黒い大群が…
育ち始めのノリをむさぼるように食べる様子が映っていたのである。
この正体は「クロダイ」。通称「チヌ」と呼ばれるこの魚、ちょっとやっかいものだ。
森本明さん:ちょっと伸びてきたらチヌにやられる、クロダイに食べられちゃうねん。いつえさを食べるのか、いつ寝ているのか、どういう集団で動いているのか、生態が分からないですね

チヌが原因ならば、捕まえようと動いたのが地元の釣り名人たちだ。
釣り名人:チヌ見たことある?きょう見れたら、うれしいな
集まった腕に覚えのある名人たち。しかし、なかなか釣れない。実はチヌは目がよく、網や餌を見分けるというのだ。
釣り開始から5時間。ようやく1匹釣ることが出来た。

この貴重なチヌを、急いで研究者たちのもとに運ぶ。
今回の釣り作戦の目的は、駆除ではなく生態調査のためだったのだ。
兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:麻酔液を溶かし込んでいます、眠った状態になる
3センチほどの小さな発信機を埋め込み、海中での動きを調べる。

■ノリの養殖にあわせて移動か
しかし、昔からこの辺りにいるチヌが、なぜ急にノリに影響を及ぼすようになったのだろうか。
瀬戸内海では、水質の改善が進むのと同時に海水の栄養分が減り、チヌのエサとなる貝やノリなどが減少。
また、冬場の海水温が上昇したことで、ノリの収穫期にチヌの活動量が増えたことなどが要因とみられているが、その実態はまだ分かっていない。
そこで、水産技術センターなどが発信機を埋めたチヌ約20匹を海に放流し、行動を調べることになったのだ。

兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:手術したてなんですけど、元気そうだったんで大丈夫やと思います、受信機を設置している場所で受信を記録できるので、ここに放流してます。あとは拝むのみです
そして2カ月後、ノリ棚に設置していた受信機を引き上げる。
兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:ぎょうさんきてるわ

そこに記録されていたのは…
兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:このあたりに居ついているクロダイが、ノリ網を張った段階で見つけて食べに行っているんだろうなという感じ
チヌが、ノリの養殖が始まる時期を狙うように移動してきていることが分かったのだ。
兵庫県水産技術センター 高倉良太さん:
ノリを食べにくる時間帯や環境条件と照らし合わせて、時間帯・場所だったりが分かると、その場所を狙って積極的に捕獲したりとか。
あとはノリを食べに来る時に、寄って来ないように対策打てないかな、ということを考えています

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