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■最大で3分の1が急性中毒にも、原因はシカなどに残る鉛弾、最新研究
 米国に生息するハクトウワシ(Haliaeetus leucocephalus)とイヌワシ(Aquila chrysaetos)の成鳥の半数近くが慢性的な鉛中毒に陥っていることが、
2月17日付けで学術誌「Science」に発表された研究で明らかになった。
研究者らは38州における1210羽のワシの体内の鉛濃度を調査した。
従来の研究の域を越えた、北米ではこれまでで最大の取り組みだ。

その結果、成鳥のほぼ半数で、骨の鉛濃度が10ppm(ppmは100万分の1)を超えていた。病理学者が慢性鉛中毒と定義する値だ。
また、急性鉛中毒とされた状態も約3割に及ぶ。

汚染源は弾丸だ。ワシはハンターが撃った動物の死骸を食べるので、ライフルや散弾銃の弾丸に含まれる鉛を摂取する可能性がある。
しかも、高濃度の鉛中毒は両種の個体数増加率を鈍らせていると、米モンタナ州ボーズマンの研究機関コンサベーション・サイエンス・グローバルの野生生物学者で、
論文の共著者であるビンセント・スレイブ氏は言う。両種とも保全の対象であり、個体数を抑制する可能性のあることは大いに問題となると付け加えた。

急性中毒の場合、体が動けなくなって、そのままゆっくり餓死するなど、恐ろしい死に方をすることになる一方で、慢性的に鉛にさらされると、より見えづらい影響も生じる。
運動や飛行の障害、精子の質の低下、免疫力の低下、食物の飲み込みや消化ができなくなることなどだ。
種や地域による鉛濃度のばらつきは少なかったが、北米の広大な平原グレートプレーンズに沿った渡り鳥の移動ルートの1つであるセントラルフライウェイでは、わずかに高いところもあった。

「我々が調べたほぼ全ての個体が、鉛にさらされたことがあるとわかりました」と、米アイダホ州ボイシにある米国地質調査所の野生生物学者で共著者のトッド・カッツナー氏は言う。

■ワシが鉛中毒になるのか
ハンターがシカなどの動物を鉛の散弾銃やライフルで撃つと、その弾丸の破片が体内全体に広がる場合がある。
ハンターはシカを殺した後、内臓を取り出して放置することがよくあるが、その内臓は鉛弾の破片で汚染されている可能性がある。
あるいは、撃たれた動物が逃げおおせてから死ぬかもしれない。いずれにせよ、ワシは汚染された内臓や死骸を漁る際に、鉛を取り込む恐れがある。

自然保護活動家たちは長い間、ハンターたちが高品質の鉛と価格の変わらない鋼または銅製の弾薬に切り替えるよう、奨励金や法律の制定を求めてきた。
「猛禽類の鉛中毒は50年以上も前からよく知られているのに、ほとんどの国で鉛弾の使用を減らす規制の動きが鈍いのは、本当にもどかしいです」
と言うのは、スペイン野生動物研究所のラファエル・マテオ・ソリア研究員だ。なお、同氏は今回の論文には参加していない。
ユーラシア大陸では、イヌワシ、オジロワシ、その他の大型猛禽類が、弾薬の鉛によってやはり広く中毒になっている
(編注:日本でも同様の問題があり、北海道では鉛ライフル弾及び鉛散弾の使用が禁止されており、本州以南でも2025年度以降に段階的に規制される予定)。

■安全なレベルなどない
今回の研究では、生きている個体と死んだ個体の両方からサンプルが採取された。
前者の場合、研究のために捕獲した個体や、研究とは無関係に獣医師の治療を受けていた個体で、血液中の鉛濃度が測定された。
死んだ個体の場合、骨、肝臓、羽毛が調べられた。

重金属である鉛は骨に蓄えられる。
その鉛はカルシウムと入れ替わって再び血液に放出される可能性がある。
羽毛の分析から、野生での寿命は最長で20年とされるハクトウワシとイヌワシの最大で3分の1が、最近、急性鉛中毒になったことが示唆された。

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