ロシアはこの瞬間のために、何年も準備をしてきた。

2014年にロシア軍がウクライナのクリミア半島を併合した際、ロシアに対する国際的な制裁が始まった。ロシア政府はここから、重要なことを学んだ。

それ以降、ロシアは防御を固めてきた。米ドルへの依存から脱却し、制裁に強い経済をつくろうとしてきた。

ウラジーミル・プーチン大統領は、西側諸国が予測しているよりも長く、制裁に耐えられると考えているかもしれない。

■外貨準備高

今年1月までに、ロシア政府が保有する外貨と金は、過去最大規模の6300億ドル(約74兆円)に達している。

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ロシアの外貨準備高の推移。緑色が外貨で、黄色が金を表している

これは世界でも4番目の規模の外貨準備高で、これだけあればロシア通貨ルーブルは当面、安定し続けられる。

加えて、ロシアがドル建てで保有する外貨の比率は5年前の40%から約16%へと比重が減っている。一方、約13%を人民元で保有している。

いずれも、アメリカが主導する制裁からロシア経済を守るための措置とされている。

■「ロシアという要塞」

ロシア経済の仕組みには、他にもさまざまな変化がみられる。

ロシアは年月をかけて、外国からの融資や投資への依存を軽減してきた。その上で、西側の市場から逃れ、新しい通商の機会を積極的に探している。

この戦略で大きな役割を担うのが中国だ。

ロシア政府はまた、西側の中央銀行が運営している、国際金融取引を担うスイフトから締め出された場合に備え、独自の取引システムの構築に乗り出している。

その上で予算削減を行い、経済の成長よりも安定を優先してきた。

これにより、ロシア経済は過去10年間、年間成長率が平均1%未満にとどまっている。しかしその過程の中で、外国に頼らない体質を獲得しているかもしれない。

貿易データ分析を行っているコリオリス・テクノロジーズのレベッカ・ハーディング最高経営責任者(CEO)は、「ロシアはいわば金融システムの代替を構築し、西側から科されるであろう制裁の影響に耐えられることを目指している」と指摘した。

「しかし、こうした動きには短期の痛みが伴う。ロシアのシステムの脆弱(ぜいじゃく)性は、まだ世界にほとんど浸透していないという点にある」

■戦略的な利益

これはロシア政府にとっても危険なゲームだ。ロシアの主要行、特に国営銀行への制裁は手痛いものになるだろう。

しかしプーチン大統領は、アメリカやイギリス、欧州連合(EU)が別の戦略的利益を考慮すると計算しているかもしれない。

一部の国は他の国より、ロシアの石油やガスに制裁を科す方が簡単なことは確かだ。EUは天然ガス供給の40%をロシアに頼っている。イギリスでも、3%はロシアに依存している。

ドイツ政府は22日、ロシアからの天然ガス輸送パイプライン、ノルドストリーム2のプロジェクト承認停止を明らかにした。ロシアにとっても打撃だが、これにより、西欧のエネルギー価格は直接的な影響を受けることになるだろう。

※以下省略。記事全文はソース元にて


クリス・モリス世界貿易担当編集委員

3時間前
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60502502