秋山文野 [テクニカルライター] Mar. 07, 2022, 11:05 AM

2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻から、アメリカ、日本、欧州、カナダ、ロシアの5極で運用されてきた「国際宇宙ステーション(ISS)」を取り巻く状況が不透明になっている。
ロシア国営宇宙公社ROSCOSMOS(ロスコスモス)のドミートリ・ロゴジン総裁は、ISSの運用継続についてアメリカに非があるかのような一方的な発言を繰り返し、信頼関係を損ねている。
おおまかにいえば、ロシアと西側諸国の関係が悪化すれば、ISSの軌道制御に困難が起こる ── というのがロゴジン氏の一方的な主張だ。
ただし、宇宙産業を取材してきた立場から見ると、一連の発言には誇張や意図的な「事実の無視」が含まれている。ロシア側のあおりに乗せられないための知識が、受け止める私たちには必要だ。
これまでのやり取りから、経緯と発言の意図を解説する。




ロシアと西側の関係悪化が「ISS制御に影響する」虚実

ウクライナ侵攻を受けた米バイデン大統領による経済制裁に反発して、2月25日にロゴジン氏は「ISSにおける米ロの協力関係を壊すのか?」と一連のツイートをした。
Twitterを中心に言及が広がった「ISS落下」とは、ツイートの中で「最悪の予想」として出てきたものだ。ロゴジン氏がその実行を示唆したというのは不正確だ。該当部分を取り出すと次のようになる。 




「3.私たちのISSにおける協力関係を壊すのか?
これは、私たちのコスモナウトとそちらのアストロノートの訓練センター間での交換を制限することで、すでに実施されている。
それとも、そちらだけでISSを管理するのか? バイデン大統領は分かっていないかもしれないので説明してやってほしいのだが、そちらの“有能な”ビジネスマンがせっせと地球低軌道にバラまいてきた危険な宇宙ゴミからの回避を担っているのは、ほとんどロシアのプログレスMS補給船のエンジンなのだ。
そちらが協力関係を断つのであれば、誰がISSの制御されていない軌道離脱とそれに続くアメリカや欧州への落下を食い止めるのか? 500トンの構造物がインドや中国に落ちるという可能性だってある。
そのような見通しで彼らを脅威にさらすのか? ISSはロシア上空を通過しないので、リスクを引き受けるのはすべてあなた方だ。備えはできているのか?」(ロゴジン氏のTwitterの連続投稿より、筆者翻訳)





冒頭の「宇宙飛行士交換はすでに制限されていて、ISS相互協力が損なわれている」というのは「ISS協力関係を壊したのはアメリカだ」という意味を含むものと思われる。責任転嫁から始まっていると読めるが、ツイート2つ分くらいのメッセージの中に、おそらくは意図的に言及されていないことがいくつも含まれている。






1. 「危険な宇宙ゴミ」を拡散させているのは、むしろロシア側
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://www.businessinsider.jp/post-251368