塩田:大阪の将来について、中・長期的に見た場合、日本全体で顕在化しそうな高齢化と人口減の現象が大阪でも顕著になるのでは、と予想する見方もあります。

松井:10年前、国の調査で、大阪府域の人口は当時の880万人から10年後には850万人に減少するという予測値が出ていました。
ところが、10年が経過して、現在は883万人で横ばいです。大阪から出ていく人と入ってくる人の比較の流動人口も、昨年は大阪府域全体でプラスです。
入ってくる人の数が大阪市は東京23区よりも多い。

もちろん人口減少を食い止めるためにいろいろなことをやっていますが、その効果が表れてきたかなと思っています。
その結果、10年前と比べて、大阪市の財政がよくなった。一番の牽引車は市民税です。当時、1300億円程度だったのが、今は2200億円です。現役世代の転入が大きい。

この10年、「待機児童ゼロ」ということで、保育所の整備をやってきました。昔は保育所に預けられないから、どうしても週何日かのパートでした。
待機児童はまだゼロにはなっていませんが、今は数人です。現役世代が働きやすいようにして、雇用が生まれた。非課税だった世帯が課税対象になった。それだけ市民税の税収が増えているわけです。

■現役世代の人たちは行政サービスをシビアに評価
現役世代の人たちは行政のサービスを非常にシビアに見ています。大阪の場合、大阪府・大阪市で全国に先駆けて教育無償化に取り組んできました。
私立高校の完全無償化は現在、全国で大阪府だけです。大阪市は一昨年から小・中学校の給食費も無償です。
全国の政令指定都市では大阪だけです。給食費は子ども1人で1カ月4500円、2人で9000円かかっていた。
春夏冬の休みがあるので、年間で計10カ月分、約9万円です。そういうことも、子育て世帯にとって非常に生活しやすい町として認識されているだろうなと思います。

日本全体の高齢化・人口減対策は国がやらないとダメですが、長期的には高齢化社会の解消はやはり少子化対策に力を入れるしかないと思っています。
それには何よりも子育ての負担の軽減で、僕らが大阪でやっていることを全国でやるべきです。
https://toyokeizai.net/articles/-/536137?page=4