2022/03/09 05:00

 ロシアのどのような言い分を取り上げても、今回のウクライナへの軍事侵攻は正当化できるものではない。

 プーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大について、1991年に「米国が東方拡大はしないと口約束をした」と繰り返し述べている。ドイツの再統一交渉時、米国のベーカー国務長官らがロシアに語った内容を根拠としている。

 しかし、NATOの一部政治指導者の発言を、NATOの総意とみなすのは無理がある。ましてや口頭での約束を破ったからといって、主権国家への侵攻が許されるわけがない。

 「口約束」の後の展開も重要だ。ロシアは97年にNATOと基本議定書を結び、互いに敵と見なさないことを確認した。NATOの東方拡大を事実上黙認したことになる。

 2002年には「NATOロシア理事会」新設に関するローマ宣言にプーチン氏が自ら署名し、NATOに接近した。ローマ宣言は、バルト3国のNATO加盟につながった。

 ロシアとNATOが2度にわたって文書を交わし、協力の強化で合意している事実は重い。

 「欧州の秩序から自分たちは 弾はじ かれた」というロシアの主張も、あまりにも一方的だ。

 欧州連合(EU)はプーチン政権に対し、政治・経済・文化などの分野で連携する「EUロシア共通空間」を含め、様々な構想を提示してきた。だが、その都度ロシアはEUの提案を退けた。EUとどのような協力関係を築きたいのか、ロシア側が具体的に示したことはない。

 他方、欧州側にロシアとの意思疎通の努力が欠けていたのも事実だ。

 ロシアが欧米をあからさまに敵視するようになったのは、08年のNATO首脳会議でジョージアとウクライナの将来加盟が約束されたのがきっかけだ。ロシアは14年、ウクライナの主権を認めることを柱とした1994年のブダペスト覚書を破り、クリミアを併合した。

 その後、ロシアと欧州の対話の機会は著しく細ってしまった。欧州がロシアを厄介者のように扱った結果、ロシアが孤立感を深めていった側面は否定できない。

 ウクライナ侵攻を踏まえ、先進7か国(G7)は、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要銀行を排除するなどの経済制裁を決めた。

 「オリガルヒ」と呼ばれるロシア新興財閥の幹部が、プーチン氏に忠誠を尽くしてきたのは損得勘定からだ。制裁で苦境に陥れば、オリガルヒらの「プーチン離れ」は一気に進むだろう。

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     ===== 後略 =====
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