新型コロナウイルス感染拡大に伴い、福岡県に1月27日から適用されていた「まん延防止等重点措置」が今月6日までで解除された。政府は当初、解除に慎重姿勢だったが、地域経済への影響を重視して解除を求めた福岡県の意向を尊重する結果となった。

 感染の「第6波」で、県内の新規感染者数は2月5日の5600人をピークに減少傾向となり、病床使用率も2月14日の86・7%から徐々に低下した。政府は適用解除の目安を「病床使用率がおおむね50%を下回る」としており、県幹部は早い段階から「まん延防止措置による経済への影響は大きい。50%を切っていなくても、下回る見通しが確かになれば解除要請の判断をする必要がある」と解除へ向け動いていた。

 服部誠太郎知事が政府に解除を要請した3月3日時点でも病床使用率は56・6%と十分に改善しきっておらず、政府は解除に慎重姿勢だった。ただ福岡県は、3月中旬には50%を下回ることが見込まれる▽重症化リスクが高い60代以上の感染者が減っている▽重症病床使用率が低い――など「全ての情報を国と共有して協議し、解除を要請した」(服部知事)という。

 県内の感染の場が、高齢者施設や学校などが主になっていたこともポイントだった。服部知事は記者会見で「飲食店の営業時間短縮や酒類提供の制限などが要請の中心となる措置を継続する効果と、社会経済活動に与える影響を勘案した」などと説明。適用や解除について岸田文雄政権は都道府県の意向を尊重する方針を貫いており、政府側も了承した。

 県の見込み通り、病床使用率は3月8日時点で49・4%に下がった。しかし、オミクロン株の感染力の強さから「感染再拡大は十分にありうる」との見方もある。病床使用率が福岡県より低い熊本県は、先行解除した他の自治体で拡大の傾向があることなどを理由に九州で唯一、延長を求めた。6日の会見で蒲島郁夫知事は「県民や事業者に負担をかけるが、今のうちに感染を抑え込み、次の波の到来を遅らせて経済活動を再開させたい」と強調。同席した木村敬副知事は「福岡県の判断は理解に苦しむ」と語った。

 福岡県は4月7日までの1カ月間を「感染再拡大防止対策期間」に設定。花見など路上での集団飲食の自粛や、飲食店の同じテーブルの利用は4人以内とし長時間利用は避けるといった感染対策の徹底を呼びかける。「『都道府県の意向を尊重する』という政府の言い方は聞こえは良いが、裏を返せば『何かあったら都道府県の責任』ともいえる。絶対に気を緩めてはいけない」。ある県幹部は厳しい表情で語った。【光田宗義、吉川雄策】

毎日新聞 2022/3/13 11:00(最終更新 3/13 11:00) 1072文字
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