https://news.yahoo.co.jp/articles/3ccdb8ff2ad7f6fbf37d6b6852496770be36d83b

「吉村洋文知事は最近、批判的な報道にいらだち、火消しで庁内がてんやわんやです。ロシア侵攻でウクライナ難民を受け入れるという政府の方針が発表されると、アピールできるネタが見つかったととりあえず、一息つきました。批判されるのが大嫌いなんですわ…」

 こっそりこう教えてくれたのは、大阪府の幹部だ。大阪府内には約130人のウクライナ人が暮らすが、「その家族や親戚などが避難してくることを想定して準備をする」と吉村知事は会見で語った。

「ウクライナ避難民通訳支援人材バンク」を立ち上げ、ウクライナ語かロシア語の通訳ができる18歳以上のボランティアを募集。50人以上の申請があったという。

 だが、幹部らの心配は尽きない。吉村知事の唐突な記者会見はこれまで、何度も墓穴を掘っているからだ。

 その一つが日本初とぶち上げた大阪産の新型コロナウイルスのワクチン開発だ。

吉村知事が入れ込んだのは、東証マザーズに上場している創薬ベンチャー「アンジェス」だ。

 吉村知事はアンジェスが開発しているとされる大阪産ワクチンについて高く評価し、2020年5月20日の記者会見では、パナソニックから大阪府に対し、新型コロナウイルスのワクチン開発に寄せられた2億円のうち、1億5千万円をアンジェスの創業者、森下竜一教授が所属する大阪大学に割り当てたことを明かした。そして同年5月25日、自らのツイッターでこう発信した。

<大阪大学発のバイオ企業アンジェスは新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)を7月から始める。動物実験の成果などを受けて厚生労働省や医療機関などと治験前倒しについて協議している。有効性が確認できれば年内にも承認を受けて実用化される可能性がありそうだ>

 さらに20年6月17日の記者会見でこうぶち上げた。

「日本産、そして大阪産の新型コロナのワクチンの開発をこの間進めてまいりましたが、6月30日、今月末に人への投与、治験を実施いたします。これは全国で初になると思います」

 森下教授の名前を記した資料を発表し、期待感を示した。吉村知事の発言もあり、アンジェスの株価は急上昇。新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった、同年2月は500円程度だった同社の株価は、吉村知事の発言とともに値が上がり始めた。

 同年5月の寄付の会見後には、1565円となり、6月の「大阪産新型コロナのワクチン開発」発言後の翌17日には2163円まで急騰した。

 その後、アンジェスのワクチン開発は進まず、株価は徐々に値を下げはじめる。そして21年11月、アンジェスは治験の十分な効果を得られず、最終段階の治験を断念すると発表し、「白旗」をあげた。発表直後の株価は大幅下落し300円台になった。3月11日現在の終値は293円だった。

 森下氏は大阪府、大阪市とは深い関係がある。25年開催予定の大阪・関西万博では「2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーを務め、府と市の特別顧問の肩書もある。

 森下氏はアンジェスのIR情報で0.45%の株式を保有する大株主としても名を連ねている。

 政府や行政が上場会社の名前をあげて発言する場合、通常は株式市場が休みに入る、金曜日午後3時が過ぎてからと「暗黙の掟」になっている。マーケットに影響を与えないためだ。

(略)