日本初の女性総理候補と目される政治家たちの本音を聞く連続インタビュー。
第2弾は、かつて「安倍晋三・元首相の秘蔵っ子」「タカ派のアイドル」と呼ばれた稲田朋美・元防衛相(63)である。

──もう少し詳しく教えてください。

「ええ。ひとつは、『伝統と創造の会』(通称・伝創会。初当選同期の保守系議員らでつくる「稲田グループ」)からメンバーが次々と抜けていく状況がありました。
総裁選を考える以前の問題で、私に対する炎上騒ぎがはじまっていました」

──「炎上」ですか?

「『稲田は変節した』、『左翼に転向した』と批判されるようになって、伝創会のコアメンバーだった先生方が別の議連(『保守団結の会』)をつくり、離れていきました。
保守系の月刊誌に私を攻撃する論文が次々と載って、そのコピーが怪文書と一緒に地元でもばらまかれたのです。
地方議員や支援者の中にはそれを見て、『稲田はもうダメや』と思って。全国後援会の熱烈なファンでも去っていった人はいますね」

──昔、怪文書に悩まされたという話は第1弾(3月18・25日号)で高市さんもしていました。

「これが実物です」

──これが怪文書……。黄色の紙に、〈いつからこんなにリベラルになったのですか? これでも応援できますか? 元応援団〉とある。
保守派の稲田さんがどうして「リベラル」と呼ばれるようになったのですか。

「私は政調会長時代(2014〜2016年)に、LGBTと呼ばれる性的少数者の人権問題に取り組むようになって以来、
(旧姓の使用を法的に認める)『婚前氏続称制度』の導入を提言したり、シングルマザーの貧困対策を議論する場を党内で立ち上げたりしてきました。
私が掲げる国家像は『強くて優しい国』で、憲法改正や安全保障、皇位継承の主張は従来と変わりませんが、新たに『優しい』を重視した政策立案に力を入れはじめました」

(中略)
「わきまえない女」やから
──それからも女性活躍に注力した。それでまた保守派を敵に回した。

「話しかけても無視される。目も合わせてくれない人もいましたね、昨日まで仲間だったのに」

──男社会の逆鱗に触れてしまった。

「いや、女性からも煙たがられましたね」

──それは、精神的にも応えたでしょう?

「応えたんかな? 私、『わきまえない女』やから、偉い人を怒らすのは天下一品。去る人もいれば、来る人もいる。
昨年の選挙では3回も怪文書をまかれて、『稲田朋美を落選させる会』っていう車がぐるぐる回ったりしたけど、すごく票が伸びた。
どこのたまり場に行っても、今までにないくらい女性が来てくれました。
やっぱり福井のような保守色の強い地域ほど閉塞感を抱えている女性がたくさんいて、そういう人が応援してくれるようになりました。2万票も増えたんですよ」

 稲田氏といえば、「右翼のアイドル」で、草の根保守運動の絶対的センターだった。
教育現場で進むジェンダーフリーの流れが「過激」だとして、激しく反発してきた“闘士”が、いつの間にかウイングを広げていたことを知らなかった読者も少なくなかろう。

 (中略)
「一言で言えば、私は無知だったのでしょう。DVの問題とか興味がなかったし、クオータ制は逆差別だと信じていましたが、
女性蔑視や男女不平等を改善することに右も左もない。やっぱり党の政調会長を務めて、いろんな当事者の話を幅広く聞く機会が増えると、
私は共感力が強い人間だから『何とかしなきゃ!』って目覚めたんですよね。

LGBTも、性別への違和感を抱く子どもたちが不登校や自傷行為に追い込まれる実態を知って、
これまで苦しんでいる当事者の存在に思いが至らなかったことを反省しました。

国会議員は全国民の意見は聞けないし、全国民の立場は理解できないけど、『正しいこと』のためであれば、自分が変わる勇気を持つべきだと私は思います」

https://news.yahoo.co.jp/articles/67b6eb2a7fe02bd254e1cbda4e9de1e5e0114aec?page=2