【パリ=白石透冴】ウクライナ軍は22日、首都キエフから西に約65キロメートルの地点にある地方都市マカリフをロシア軍から奪回したと発表した。ロシア軍は同都市などを拠点にキエフを包囲する考えとみられるが、補給などが計画通りに進んでいない可能性がある。一方、ゼレンスキー大統領は同日公開したビデオ動画で南部の港湾都市マリウポリが「灰になってしまった」と説明し、民間施設を攻撃するロシア軍を非難した。

ネット上ではウクライナ軍兵士がマカリフとみられる地域の建物で同国国旗を掲げる様子が出回っている。ただ現地ではまだロシア軍による砲撃が続いており、完全にウクライナ軍が掌握したわけではないとみられる。

マリウポリでは包囲するロシア軍が2週間以上にわたって砲撃を続けており、食料や医薬品の不足が深刻になっている。ロシア側は降伏を受け入れるよう求めたが、ウクライナ側は拒否したという。ゼレンスキー氏は国民に「できることは全てやって、国を守り、人々を守ってほしい」と語り、抗戦を呼びかけた。

ベレシチューク副首相の22日の説明によると、同都市には避難を希望する住民が約10万人取り残されている。砲撃だけではなく、市街戦も続いているとの情報がある。

戦局が膠着する中、ロシアによる大量破壊兵器の使用への警戒感もくすぶる。ロイター通信がタス通信の情報として報じたところによると、ロシアのペスコフ大統領報道官は22日、ロシアの存続が脅かされた場合には核兵器を使うと語った。

一方、米国防総省高官は22日、ロシア軍はウクライナへの侵攻開始から兵力を1割以上失ったとの分析結果を示した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計では、ロシア軍による侵攻でウクライナを離れた難民は21日時点で355万人を超えた。約6割に当たる211万人がポーランドに渡り、ルーマニアに54万人、モルドバに36万人などとなっている。侵攻が長引けば大幅に増える恐れがある。

ロイター通信によると、ウクライナ政府は22日、2022年の同国内の耕作面積が700万ヘクタールになるとの見通しを明らかにした。侵攻前は1500万ヘクタールを予定していたという。ロシアの侵攻で生産や輸出が滞るとの見方から、小麦などの価格上昇につながっている。エジプトがパンの小売価格を一部統制するなど、既に世界に波紋が広がっている。

仏エネルギー大手トタルエナジーズは22日、ロシアからの原油や原油関連製品の購入を22年末までにやめると発表した。従来は新規投資を停止するとだけ表明していたが、批判の高まりなどを受けて踏み込んだ。ロシア国内の複数のエネルギー関連企業に出資しているが「現状ではロシア国外の買い手を見つけられない」などとして売却する考えは否定した。

日本経済新聞 2022年3月23日 4:59 (2022年3月23日 6:00更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22DGG0S2A320C2000000/