https://www.arabnews.jp/wp-content/uploads/2022/03/000_326b3am.jpg
バイデン政権がウィーンでの協定に固執する根底には、前任者のドナルド・トランプに対する個人的な恨みがある。(AFP/ファイル)

バイデン氏は「友人を失い、同盟国を遠ざける達人」になりつつある
https://www.arabnews.jp/article/opinion/article_63650/

ファイサル・アッバス
「最悪の政治的・軍事的シナリオは、ロシアに脅かされ、アメリカに保護を約束されることだ!」。レバノンのベテランジャーナリストであり、アッシャルク・アルアウサトのコラムニストであるイヤド・アブ・シャクラ氏は月曜日にこうツイートした。私はこの意見に、これ以上ないほど同意する。今日の世界情勢を見事に、そして簡潔にまとめている。

そして、私が付け加えるならばこうだ。作家のトビー・ヤング氏が2001年に書いた回顧録『友人を失い、人を遠ざける方法(原題:How to Lose Friends & Alienate People)』の続編を書くとしたら、ジョー・バイデン米国大統領の外交政策は大いに参考になるだろう。

ここ数週間分の見出しを見てみよう。まずは中東で最も近い米国の同盟国であるイスラエルだ。イスラエルのナフタリ・ベネット首相とヤイル・ラピド外相は、ウィーンの無策な米国交渉団がイランの要求にどこまで応じる用意があるかに衝撃を受けた。米国がイスラム革命防衛隊(IRGC)のテロ組織指定を解除するとは「信じがたい」と述べている。

アラブ(と自分たち)の懸念のために戦うイスラエルの2人の重要人物が、バイデン政権に釘を刺すことは珍しい。IRGCの悪の触手は中東全域に及んでいること、そして、バイデン氏はこの地域のアメリカ市民とアメリカ軍への攻撃に責任を負うということだ。

もちろん、まともな人間はイランの核武装を望んでいない。世界はより厳しく緊密な取引を得るために、できる限りのことをすべきである。しかし、新たな合意を得るためにIRGCのテロ指定を解除することは、航空燃料を吹き付けてながら火を消そうとするのと同じことだ。

バイデン政権がウィーンでの協定に固執する根底には、前任者のドナルド・トランプ氏に対する個人的な恨みがある。2021年初め、その復讐心は、内部の政治的ないざこざとともに、テヘランが支援するフーシ派民兵のテロ組織指定の解除にもつながった。トランプ政権が残した称賛すべき決定を覆すことになったのだ。これを受けて、2014年に国際的に承認されたイエメン政府を打倒したフーシ派は、サウジアラビアやUAEの民間施設を意図的に狙う行為を活発化させた。バイデン政権は自らの立場を再考するどころか、友好国を疎外する明白な戦略を倍加させたのだ。

世界のエネルギー供給がすでに途絶え、それに伴う価格上昇が世界を悩ませている。そのような情勢の中、フーシ派は、先週末にサウジアラビアのアラムコの施設を露骨に攻撃した。しかし米国は、フーシ派をテロリスト集団として再指定するという、コストゼロの最低限の決断さえしていないのだ。したがって、サウジアラビアが月曜日に述べたように、フーシ派の攻撃による石油供給問題に対して責任を負いかねるというのは、まったく正しいことである。

トロントから東京まで、トラック運転手、航空会社、貨物船、病院、その他ほとんどすべての産業や個人が、バイデン氏の無分別な外交政策の影響を受けている。彼らが感じている経済的ピンチの原因はバイデン氏にあることを忘れてはならない。

しかし、サウジアラビアのことは一旦、脇に置こう。アフガニスタンも忘れよう。イスラエルも無視だ。米国の誤った判断を示す最大の証拠は、ウクライナだ。ゼレンスキー大統領は、ウクライナのNATO加盟という永遠の希望が破れ、米国議会にさらなる援助を懇願しなければならなくなった。クリミア併合に関するオバマ大統領時代の「レッドライン」が軽視されたことは、今日起きている事態を招く危険な前例となった。

サウジアラビア、UAE、イスラエル、ウクライナの長年の友人や同盟国がバイデン氏を説得するのに十分でないとしたら、あるいは、サウジの新聞編集者は必然的にバイデン氏に対して偏った意見を持つと考えるなら、彼のチームはもっと身近に目を向けると良いだろう。例えば、彼の外交政策の方向を雄弁な言葉で非難した最近のウォールストリートジャーナルの社説を読んでみるといい。「この新しい大国間競争の時代において、米国は、米国の利益と価値に害を与えようとする権威主義的な侵略者を抑止するために手を貸してくれる同盟国を疎外する余裕はない。米国は、サウジを失った代償をウクライナ危機で払っている」と社説は結んでいる。

以上、私の考えを述べた。

・ファイサル・J・アッバス氏はアラブニュース編集長

ツイッター: @FaisalJAbbas