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「自分が持っていた大麻は、本当に法律で禁止された『大麻』なのか?」「なぜ、大麻を持っていただけで、刑罰を科されなければならないのか?」
大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の疑いで逮捕・起訴された陶芸家の男性が、刑事裁判で「異例」の行動に出た。
男性は、罪を認めるか否かを保留し、逆に裁判所に問いを投げかけ、法廷をざわつかせている。
なぜ、男性は、このような行動に出たのだろうか。

●奇しくも、8月8日「ハッパの日」に逮捕
裁判所に「問い」を投げかけたのは、「縄文」をテーマに焼き物をつくる陶芸家、大藪龍二郎さんだ。
縄文時代の土器には、縄の道具(縄文原体)が使われた形跡がある。大藪さんは15年以上かけて、この縄の道具の素材を研究。
行き着いた答えは「大麻」(精麻)だった。実際に道具として使ってみると、使い勝手のよさや耐久性も感じられたという。

魅力を感じたのは「道具」としてだけではない。
軽度のパニック障害がある大藪さんは、かつてイギリスで暮らしていたころ、まわりに勧められて大麻を喫煙し、症状が落ち着くことを実感した。
イギリスでも大麻の所持は違法ではあるが、逮捕されることはなく、喫煙している人は珍しくなかった。
※略
●異例の「罪状認否」保留…法廷内、どよめく
起訴状には、「大麻を含有する植物片約3.149グラム」を所持したと書かれていた。大麻を所持したことを認めれば、裁判を早く終わらせることはできる。
しかし、大藪さんには、どうしても、それができない理由があった。

「ルールを破ったことは反省しています。しかし、私は植物片を持っていただけで、具体的な被害者はいません。正直なところ、逮捕・起訴され、
さらなる刑罰を受けるほどの『重罪』なのか?という疑問があります。
私は、逮捕されてから23日間、自由を奪われたことで、十分に制裁を受けたと感じていますし、今も受け続けています。
これだけの制裁、刑罰を科すほどのことならば、大麻草がどれだけ危険で社会的な害があるのかを具体的に示してほしいと思ったんです」
また、起訴状に書かれた「大麻」や「大麻を含有する」とは、どのような意味なのか?何をもって、大麻取締法が規制する「大麻」と鑑定しているのか?との疑問も抱いた。
なにより、大藪さんにとって、大麻草は「毎日触れる道具の素材」で、作品をつくるうえで「欠かせないもの」だ。だからこその「思い」もあった。

「大麻草は単なる道具ではなく、作品の魂に等しいものです。今回の裁判で、自身の信条に逆らい、簡単に『大麻草は悪いものです』と認めてしまえば、
一生作品をつくることができなくなります」

そう考えた大藪さんは2021年10月26日、前橋地裁で開かれた第1回公判で、起訴状に書かれた罪状を認めるかどうか(罪状認否)について「保留したい」と発言した。
罪状認否を保留するという極めて「異例」の事態に、法廷内ではどよめきが起きたという。
さらに、大藪さんは「大麻とは何かを明らかにしてほしい」
「大麻が有害で危険であることを『公知の事実』とするのではなく、具体的に説明してほしい」などと訴え、これらが精査されたうえでの判決であれば従うとした。

大藪さんは、次のように「覚悟」を語る。
「裁判という場で、あえて問題提起することで、大麻を必要とするほかの人の役にも立ちたいと思っています。長い道のりになることは、もちろん覚悟のうえです」

●大麻取締法は「THC取締法」ではない
疑問を抱いているのは、大藪さんだけではない。法学者や法律家の間でも、現行の大麻取締法を疑問視する見解はみられる。
※略

●弁護側の証拠はすべて「不同意」
大藪さんを支援するため、大麻に詳しい法律家や医師、作家が次々と立ち上がり、タッグを組んだ。
弁護団は、大麻取締法違反事件を数多く手がけてきた丸井英弘弁護士と、刑事政策・犯罪学の研究者としても知られる石塚伸一弁護士の2人。
※略
ところが、検察側は、すべての証人を「異議あり」とした。また、弁護側が提出した「第24号証」までの文献や新聞記事などの証拠は、すべて「不同意」とされている。

現時点では、証人や証拠が「異議あり」「不同意」とされた理由については、明らかにされていない。
丸井弁護士は「大麻事件は、特に証拠が認められにくい傾向にある。このままでは、裁判が対話の場にならない。
なぜ『同意』しなかったのかについて、明らかにするよう求めていく。新たな証拠や証人も申請する」と語る。

※略

★1:3/23(水) 12:46