※2022/03/27 12:0047リポーターズ

 ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説を行い、激化するロシアの攻撃により子どもを含む多くの国民が犠牲になっている悲惨な実情を訴えた。日本に先立って演説した欧米などでは、その国々の著名なリーダーの格言を引用したり、具体的な戦争に関するエピソードを使い分けたりして、支援の輪を広げてきたゼレンスキー氏。日本でも原発で有事が起きた際に与える影響の大きさや避難民の苦しみなどをちりばめながら、ロシアへの経済制裁の継続を求めた。こうした世界を巻き込むゼレンスキー氏の演説手法について、東京女子大の橋元良明教授(社会心理学)に解説してもらった

 ―日本の国会に登場したゼレンスキー氏は、無精ひげにカーキ色の上着姿でした。欧米での演説やSNSのビデオメッセージでもTシャツ姿が多く、スーツを基本とする一般的な政治家の服装とはかけ離れています。

 「情報戦や心理戦といったプロパガンダの技法の一つに『庶民化(平凡化)』があります。これは、話し手が大衆と同じ立場や境遇であることを強調する技法で、話し手も『あなたの仲間だ』というアピールができるとともに、安心感と一体感を醸し出すと言われています。ゼレンスキー氏の飾り気のない服装は、大衆に『私たちと同じ』であることを意識させているのではないでしょうか。また、特別な知識階級や政治家の出身ではなく、コメディアンから大統領になった事実も親近感を生み出し、『庶民化』の効果を高めています」

 ―日本の演説でも一体感をつくり出す工夫はありましたか。

 「ありました。まず、『日本の皆さん』という呼び掛けるフレーズが複数回にわたり使われ、その上で日本に敬意を表しました。具体的な内容としては、『調和をつくり、維持する能力が素晴らしい。環境を守り、文化を守るというのが素晴らしい。ウクライナ人は日本の文化が大好きだ』などと持ち上げました。ゼレンスキー氏は、妻が目のよく見えない子ども向けのプロジェクトで日本の昔話をオーディオブックにしたとのエピソードを紹介しながら、『距離があっても、価値観は共通している。心は同じように温かい』と述べました。対ロシアで一緒に戦いましょうとの共感を生み出そうとしたのではないでしょうか」

 ―欧米各国の演説では、その国が経験した危機的状況やリーダーの格言などを交えながら、武器供与を中心とした支援の拡大を求めてきました。どういった意図が隠されていますか。

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