新型コロナウイルスの第6波で、大阪府内では高齢者・障害者施設で療養中に亡くなった人が23日までに57人に上ることが府の集計で分かった。これまで最も多かった昨春の第4波(40人)を上回る。感染拡大で病床が 逼迫 するなか、クラスター(感染集団)が多発した高齢者施設では、入院など積極的な治療ができず 看取り になるケースが相次いだためとみられる。

■入院できず
 
 府は施設クラスター(5人以上)が発生し、感染しても入院せず、施設内で療養中に亡くなった人を集計している。「医療崩壊」の危機に直面した第4波では入院できず自宅で亡くなる人が相次いだため、施設内の死者についても昨年5月から公表を始めた。ただし、亡くなる直前に病院へ搬送された人は含まれていない。

 府が第6波の始まりとする昨年12月17日以降では57人。施設別の内訳は公表していないが、死者全体の93%を70歳以上が占めることから、多くは高齢者施設とみられる。

 クラスターが起きた施設数は23日までに718件に達し、第4波(128件)や昨夏の第5波(78件)を大きく上回る。施設内での陽性者数は1万2027人で、第4波の6・3倍に上っている。

 第5波では高齢者へのワクチン接種が進み、抗体カクテル療法による早期治療が奏功したことで病床不足にならず、スムーズに入院ができたため施設内での死者は2人にとどまった。しかし、第6波では2回目までのワクチンの効果が薄れる一方、3回目の接種が遅れたことで高齢者にも感染が拡大。病床逼迫で高齢者でも入院できないケースが相次ぎ、約9割が施設内での療養を余儀なくされた。

■「救える命が」

 府内のある特別養護老人ホームでは入所者の容体が悪化しても入院できず、看取りに備えて遺体を入れる納体袋を初めて用意した。施設内で亡くなった人はいないが、施設の責任者は「保健所から『基本的に入院できない』と言われた。施設内でできる治療を選ぶしかなく、救える命が救えない状況だった」と語る。

 高齢者は元々体が弱っていて、感染をきっかけに容体が悪化するケースも少なくない。 誤嚥性 肺炎や老衰、心不全など「コロナ以外」が直接死因となった人は約4割に上る。

 府専門家会議で座長を務める 朝野 和典・大阪健康安全基盤研究所理事長は「施設が孤立無援になっていたのではないか。必要な治療は受けられるよう選択肢を持てるようにしないといけない」と話している。

2022/03/29 11:43
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220329-OYT1T50119/