※4/4(月) 17:01 東洋経済オンライン

世界秩序が読めない今ですが、歴史を振り返ると「思わぬ理由」で、国ができたり滅んだりした史実に数多く出合います。
「国境線の引き間違えで新国が誕生することもあれば、『中立』に苛立った他国に滅ぼされることも。今、人類の盛衰の歴史を学ぶ意義は大きい」と話すのは、英オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻し、消えた48か国で歴史を学ぶ『世界滅亡国家史』を著したギデオン・デフォー氏。同書より、存続期間1日の滅亡国家「クリミア共和国」を取り上げます。

 2014年、ウクライナ領のクリミア半島が突如独立を宣言し、「クリミア共和国」樹立を宣言しました。そして翌日、自ら望む形でロシアに併合されます。当然ながらウクライナはこの独立・併合に異議を唱え、国際社会もロシアを強くバッシングしますが、現在にいたるまでロシアが実効支配を続けています。

 この半島をめぐる攻防は現在のウクライナ侵攻の前哨戦とも呼べる出来事だったわけですが、そもそもクリミアには征服と再征服が繰り返されてきた歴史があります。

 なぜ1つの半島に多数の国家が執着し、奪い合うのでしょうか。背景にあるのは、ある「地政学的特徴」です。

■クリミア半島を囲む珍しい「凍らない海」

 クリミアは、落雷で炎上する海に囲まれています。海底の不毛帯から可燃性の有毒ガスが湧き出しているためで、この地政学的特徴が何世紀にもわたる「征服されては支配者が変わる」クリミアの歴史を形成しています。

 古代ギリシアの歴史家ヘロドトスによると、最初の入植者はキムメリオス人でした。その後スキタイ人に侵略され、彼らのあとにギリシア人、続いてタウリア人、ゴート人、キプチャク人、アラン人、ルーシ人、ハザール人、アルメニア人、モンゴル人、そしてジェノヴァ人と支配者が次々に入れ替わります。

 これはひとえに、クリミアが高緯度地域に珍しい「不凍港」だったから。やがて半島はロシア皇帝の手に落ちます。ロシアにとって、クリミアは海水浴をしても顔が凍りつかない珍しい場所で、当初はリラックスできる別荘地として重宝されました。そして次第に軍用港としての重要性が高まっていきます。

 第2次世界大戦の独ソ戦で、クリミアは一度ナチスに占領されます。残忍な傀儡政権が樹立され、多くの人が犠牲となりますが、枢軸国が敗戦するとクリミアはスターリンの手に戻ることに。

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